お祭りの夜店で舌鼓を打ったかと思えば、ここぞというときの“神頼み”で願を掛けてみたり。神社は信仰の枠を超えて、私たちの暮らしに身近な存在。8年前の東日本大震災では人々の命を救ったことでも知られる

▼標高約25メートルの高台にある福島県浪江町の諏訪神社もその一つ。あの日、神社へ駆け上った住民約50人は津波を逃れ、倒壊した社殿の木材でたき火をおこし、一夜を過ごす。以来、神社は放置されたままだった

▼そこへ救いの手を差し伸べたのが大阪の建設会社「創建」。宮大工の技を低コストで実現する独自の工法を生かし、無償で社殿を建て替え、寄贈するという

▼なぜ縁もゆかりもない企業がそこまでするのか。たまたま4年前、札幌市の神社の再建を請け負ったのが契機だった。地域住民は涙を流して完成を喜び、創建の吉村孝文会長は大きな達成感と満足感を味わった

▼災害大国日本で、被災した神社・仏閣の建て直しが滞る事例は少なくない。福島県双葉郡の帰還困難区域には44の神社が残されたまま。7日に東京で記者会見した吉村会長は「神社は人々のよりどころであり、コミュニティーの中心。復興のお役に立ちたい」と語った

▼同社は毎年1棟ずつ各地で寄贈していくという。その無償の行いは人々の心に明かりをともし、前を向く力を与えてくれる。(西江昭吾)