苦境を乗り越えようと、頑張って明るく生きる、超普通の人々の、笑顔、営み、歌と踊りを映したこの音楽ドキュメンタリーを見つめながら、激しい怒りを覚えるのは、私だけではないはずだ。

「盆唄」

 東日本大震災以降、原発事故の影響で帰宅困難区域に指定された福島県双葉町。人が消えた町に残された、大きな看板には「原子力 明るい未来のエネルギー」の文字。町の人々は故郷だけでなく、先祖代々の魂のよりどころ「盆踊り」までも奪われた。泣いてもわめいても、お金を積んでも、故郷も、あの楽しかった日々も戻ってこない。だからこそ彼らは歌い、踊る。

 「『ボヘミアン・ラプソディ』に匹敵する」と評論家たちに称された20分に及ぶラストの盆唄に、鑑賞中に渦巻いたさまざまな感情がのっかる。心地よい、だけでは帰してくれないすごみがある。(桜坂劇場・下地久美子)

桜坂劇場で9日から上映予定