アメリカ探偵作家クラブ賞を受賞した「スネークスキン三味線」(小学館文庫)というミステリー小説がある。著者は米国在住の日系人ナオミ・ヒラハラ。ロサンゼルスに住む日系人庭師のマサオ・アライが県系人の絡む殺人事件の謎を解く

▼戦争やハワイ移民史を背景にした物語で、事件の鍵を握るのが琉球王国伝来の「ヘビ皮の三味線」。作品は琉球処分や沖縄戦などの危機を乗り越えた三線の歴史にも触れる

▼琉球文化の象徴でもある三線文化を支えてきたのは、市井の人々だった。県立博物館で開かれている「家宝の三線展」を見ていると、それがよく分かる

▼展示品の前にはヤーヌタカラ(家宝)への持ち主の愛着を示すエピソードが記される。5代にわたり伝わる三線は、所有者の祖父が戦火の中で守り抜いた。南米移民の先祖の三線や、壕から見つかった棹(さお)…

▼沖縄の近現代史や家族の物語が詰まった逸品を見いだしたのは、三線の実演家や職人たち。展示会は鑑定を30年以上続けてきた琉球三線楽器保存・育成会が積み重ねてきた活動の成果でもある

▼育成会の宜保榮治郎会長は初代会長を務めた古典音楽の大家・宮里春行師の「鉄の暴風でも沖縄の三線は消せなかった」との言葉を紹介する。人々に愛され、国内外に広がった三線。家々の宝は、いずれシケーヌタカラ(世界の宝)になる。(玉城淳)