珊瑚舎スコーレ夜間中学校で学び直した牧野順子さん(76)が先日、籍のある那覇市の寄宮中で卒業証書を受け取った。戦後の混乱期、子守や家の手伝いに追われて学校に通えず、60年以上たって手にした証書に涙した

▼「卒業式」を企画したのは卒業を翌日に控えた3年生。長い花道や横断幕で出迎え、半生を振り返るスライドを上映し、盛大な紙吹雪で見送った

▼県内の夜間中学卒業者に証書が授与されるようになって12年。生徒が企画し、全校で祝った式典は初めてではないか。生徒たちの柔らかな表情やたたずまいが学校全体の温かい雰囲気をにじませていた

▼目を潤ませる生徒も多くいた。大病を乗り越えて学んだ牧野さんの姿に接し、学ぶことの意味を考える機会になったはずだ

▼珊瑚舎スコーレの星野人史代表は「学びとは、その人自身の言葉を獲得すること」だと言う。夜間中学の生徒が歩みを振り返り、思いをつづった文集からは読み書きが不自由なために味わったつらさ、語るべき言葉を得た喜びが伝わる

▼12年前、「あの年で勉強して卒業してどうするの」と冷笑した教育関係者がいた。浅く狭い学力観では、70代が学ぶ姿が10代の心を動かすとは想像もつかなかったのだろう。牧野さんから学んだ生徒たちは既に、その大人より学びの本質を知っている。前途を祝福したい。(田嶋正雄)