騒音がもたらす健康被害の専門家で北海道大学工学研究院の松井利仁教授(環境衛生学)は13日、県庁で記者会見し、米空軍嘉手納基地の騒音に起因する心筋梗塞(心疾患)で毎年約10人が死亡しているとの推計結果を発表した。夜間騒音で軽度の睡眠障害に罹患(りかん)している患者は1万7454人と試算し、睡眠障害に起因して心筋梗塞などさまざまな成人病のリスクが上昇しているとした。

嘉手納基地周辺の夜間騒音マップ

北大松井教授「毎年約10人死亡」

 松井教授は「がんなど他の疾患を推計対象に含めればさらに死亡率は上がるだろう。極めて多くの住民が死亡を含む健康影響を受けている現状を放置すべきでない」と指摘した。

 推計によると、騒音による健康影響を受ける可能性があるのは嘉手納町、北谷町、沖縄市、うるま市、読谷村で計11万4244人。

 心筋梗塞に罹患するリスクは、騒音値が夜間の平均騒音レベルを示す「Lnight(エルナイト)」40デシベル以上の地域で通常に比べ0・5~24%上昇し、騒音が原因で罹患している患者は約51人に上るという。

 推計は、県などの2014年度の騒音測定値(17地点)を基に夜間騒音マップを作り、国勢調査などで影響を受ける可能性のある人口を算出。昨秋改定されたばかりで、航空機騒音に特化して睡眠障害や心筋梗塞の影響を推計する数式を初めて示した世界保健機関(WHO)欧州事務局の「環境騒音ガイドライン」に基づき影響人口を試算した。

 より実態に即すため地上騒音の影響も反映。基地周辺は夜間の長時間のエンジン調整音など飛行時に限らない地上騒音の被害が確認されているが、計測・予測手法は確立されておらず、多くの地点で地上騒音の実測値は測定されていない。最新の知見を活用し、地上騒音の推計値を加味した。

 地上騒音源の一つだった民間住宅地近くの旧海軍駐機場が17年に移転した影響も調べたが、中部全体では影響人口に大きな変化はなかったという。松井教授は15年にも、嘉手納基地の騒音による心筋梗塞や脳卒中で年4人が死亡しているとの推計結果を発表している。

 【ことば】Lnight(エルナイト) 夜間(午後10時から午前7時)の平均騒音レベルを指し、値が大きいほど騒音の激しさが増す。日本政府は日中の平均騒音レベル「Lden(エルデン)」を用いて環境基準値を設けており、夜間に特化した騒音の基準値はない。