長時間労働の是正や多様な働き方の実現などをめざす働き方改革関連法が、4月から順次、施行される。

 8本の法律で構成される同関連法の大きなねらいは、時間外労働の上限規制などを通して労働者の健康を守ることだ。

 企業側の対応は進んでいるのだろうか。

 15日付本紙1面、社会面に紹介された事例は、似たような職場環境にある企業にとって、早急な改善が迫られるケースだ。よそ事ではない。

 携帯電話大手の代理店業務を担う県内企業の元女性社員(31)は、携帯電話ショップの店長として働いていた2014年1月、26歳のときに脳梗塞を発症した。

 約半年の入院生活のあと、翌15年7月に退社を余儀なくされ、今も実家で療養しながら週1回のリハビリに通う。 女性の申し立てに対し、沖縄労働局那覇労働基準監督署は、過重な業務との関連性が強いとして昨年11月、労災を認定した。脳・心臓疾患は、過労との因果関係の証明が難しいとされる。

 女性の発症直前1カ月間の時間外労働は109時間21分。過労死の目安とされる月平均80時間を超えていた。

 携帯電話ショップは年中無休で午前10時から午後9時までの営業。繁忙日を除いて通常は、本人を含む3人の女性で切り盛りしていたというから驚く。

 ノルマの達成に追われる一方、店長になってからは新たな業務が加わり「仕事量は3倍にも感じた」という。

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 働き方改革関連法によって残業時間の上限は月100時間未満と定められた。上限を超えて残業をさせると罰則を科せられる。

 「過労死家族の会」は、今回の上限規制について、過労死基準レベルの残業を容認するものだと強く反発した。

 100時間を超えてはならないが、それを超えなければ「今より長い残業もOK」だと、上限規制が悪用され、法の趣旨がゆがめられるおそれがある。

 脳梗塞を発症した女性は、帰りのタイムカードを打ったあとも引き続き働くことが多かったという。

 関連法は、客観的な記録による労働時間の把握をすべての企業に義務づけているが、実効性を確保するための具体策が必要だ。

 大企業の労働時間短縮のため下請けの中小企業がしわ寄せを受け、残業が増えるのではないか、との懸念の声も上がっている。

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 沖縄の失業率はこの数年の間に劇的に改善された。だが、「雇用の質」が改善されたとは言えない。中小企業の場合、資本力が弱いこともあって労働環境の改善は後手に回りがちだ。

 脳梗塞で会社を辞めた女性は、後遺症が残っているため、現在、無職だという。

 「今もどこかに、かつての自分と同じように異常に気付かず、追い詰められている若者がいるのではないか」

 彼女の悲痛な叫びをすべての企業がわが事として受け止め、労働者の健康確保を重視する企業になってほしい。