1952年のひめゆりの塔での慰霊祭や、60年の米大統領アイゼンハワー来沖パレードといった場面があるかと思えば、一般家庭での子どもの誕生会の様子…

▼そんな市民撮影の8ミリフィルム映像を収集し公開するプロジェクトが県内で進んでいる。集められた映像の一部は民間の沖縄アーカイブ研究所のホームページで誰でも閲覧可能だ

▼「集めたものを抱え込むのが目的ではない。著作権などの課題をクリアして、文化資産として活用してもらいたい」。プロジェクト運営に携わるプロデューサーの真喜屋力さんは、プライベート撮影の映像が劣化などで失われることに危機感を抱く

▼国や県の公文書館が収蔵するのは、基本的にはその名の通り公的な資料。新聞社や放送局が所有するのも、ニュース性のある素材がほとんど。私的な資料はどうしても等閑視されてしまいがちだ

▼スクリーンに映し出される過ぎ去った日々は、見る者のノスタルジーをかき立てる。だがそれだけではない。例えば戦前の沖縄を撮影した「沖縄縣(けん)の名所古蹟(せき)の實況(じっきょう)」での那覇港の出船場面

▼埠頭(ふとう)からの船の見送りでは、前後に手を振る沖縄の人と、左右に振る県外の人が映り、しぐさに違いがあるのは興味深い。文字や記憶の中にしかないものが映像記録としてよみがえるとき、そこには新たな発見がある。(玉城淳)