デザイナー 岡山進矢さん(46)=熊本市出身

 イベントやラジオ番組、WEBメディアで泡盛の魅力を発信している。本職では人気古酒のラベルとパッケージの刷新を手掛けた。泡盛愛は深まる一方だが、「通(つう)ぶることはしない。あくまでもファンの一人として魅力を伝えられたら」。謙虚な姿勢は崩さない。

新デザインを手掛けた山川酒造の「珊瑚礁5年古酒35度」を持つ岡山進矢さん=東京・銀座の沖縄料理店「島どうふ」

 東京の広告会社を経て、フリーのデザイナーとして働き始めた頃、仕事でつながった沖縄の先輩デザイナーを訪ねると、忘年会や同窓会にまで連れて行かれた。どこの酒席でもつがれたコップなみなみの泡盛。「最初は飲むだけだったが、銘柄ごとに異なる風味の豊かさに興味を持った」。酒蔵を巡り、泡盛を学ぶことが楽しみの一つになった。

 人づてに縁も広がり、沖縄への移住も考え始めた頃、泡盛のラベルや広告プロモーションに参入の余地があると考えた。「趣味と実益が兼ねられる。泡盛の知識を備えたデザイナーがいてもいい」と、広告や泡盛業界へアプローチした。

 しかし県内の広告関係者からは「やみくもに来て市場を荒らすことはやめてほしい」とくぎを刺される。冷静になり、沖縄の仕事事情を調べるうちに、好きな気持ちだけでは家族と共に暮らせない現実が見えてきた。「沖縄で認められたかったら、沖縄のために3年はタダ働きしなさい」とは、とある関係者からの言葉。それだけの真剣な気持ちがあるのかと自問自答した。

 それでも泡盛への熱意は冷めなかった。「東京にいても自分ができることはあるはず」と、酒造会社と協力し、フランス料理と泡盛を取り合わせたパーティーイベントを企画。自費制作したラジオ番組では自らMCを務め、酒造所からゲストを呼び、歴史や背景を分かりやすくひもといた。

 「沖縄には多くの魅力的な泡盛があると知ってほしいが、僕も一緒に泡盛を楽しませてもらっている」と消費者目線を忘れない。その積み重ねが信用となり、古酒で定評のある本部町の山川酒造から代表的銘柄「珊瑚礁5年古酒35度」のデザイン一新を依頼された。

 「まるで映画『七人の侍』をリメークしろと言われた新人監督の気持ち」。念願のラベルデザインの仕事に緊張もあったが、「青い海やサンゴ礁、桜など本部の自然を意識した」というラベルは鮮やかな青のボトルに美しく映える。2月から販売され、早くも評判に。「憧れの人への一方通行の愛がようやく通じた感じ」と照れ笑いをする。「夢は離島含め、全酒造所を回ること」と話す目には好奇心が満ちていた。(小笠原大介東京通信員)=連載・アクロス沖縄<104>

 【プロフィール】おかやま・しんや 1972年、熊本市生まれ。多摩美術大学デザイン科染織デザイン専攻卒業後、広告プロダクションを経て独立。グラフィックデザインを行う一方、イベントなどを通じて泡盛の魅力を発信している。4こま漫画「パンダ親父」(日経BP社)が今春電子書籍化されるなど漫画家としての一面も。泡盛トリコロール主宰、泡盛新聞東京支部長。