■「ムスリム対応難しくない」割烹オーナー 名護の老舗「山吹」

 

 名護市にある創業50年の老舗『かっぽう山吹』は、ムスリムやベジタリアンなどの要望にも積極的に応じています。オーナーの新里清光さんによると、ここ数年の日本ブームやLCCの就航によって、外国人観光客の来店者数も増加しているようです。特にハラール認証などを受けているわけではない同店の、受け入れ対応のノウハウについて、沖縄県・沖縄観光コンベンションビューロー(OCVB)が主催するムスリムモニターツアーの一行をもてなした様子を取材しました。(2019年3月初旬)

 

 この日、ツアー一行に提供したのは、鶏と彩り島野菜のサンニン包み焼きをメインとした、沖縄産もずくうどん、シークヮーサーの天ぷらなど沖縄の食材を使用した和食コースでした。

 

 私たちが食べる和食と何ら変わらないメニューですが、内容はムスリムへの配慮がなされています。まず、和食に欠かせない調味料の代表格しょうゆと、鶏肉はハラール認証のもの。アルコールが含まれるみりんは使用せず、砂糖やハチミツで代用します。天つゆはかつおだしではなく野菜だしを使っていて、このだしはベジタリアンのお客様にも対応可能です。野菜サラダのドレッシングは自家製。特別サービスで提供したグラタンには、畜肉由来原料とアルコールを使用しないホワイトソースが使われています。食感を高めるために厚揚げ豆腐を入れるなどの工夫がされています。
 
 この日、ムスリム客に提供された和食は、決してムスリム専用の料理ではなく、一般の方もムスリムも食べられる料理であると分かります。使用できない調味料などは抜くのみならず使える調味料で代用することで味をしっかり調整しているところに、料理人としてのおもてなしを感じます。

 
 

 調理器具に関しては、包丁、まな板、フライパン、鍋や皿などは、ハラール専用の調理器具として、他の料理を作る器具と分けて使っていて、洗浄は3回行うそうです。

 

 また料理だけでなく、礼拝のニーズに対応するために、個室の畳間を礼拝スペースとして提供しています。この日はツアー同行の旅行社によるアドバイスで、ヨガマットを代用した礼拝マットが準備されていました。

 
食後に礼拝するお客様の様子

 ツアーディレクターを務めたデニス・トルトーナさんは、事前に割烹に入り、新里オーナーにメニューや使用する調味料の原材料を確認。調味料は豚肉由来成分とアルコール成分が含まれていない事を確認し、肉については「ハラール認証」のマークが付いていることを気にする方が多いので、認証マークを提示するために取っておくことが重要だといいます。

 お客様が食事を始める前に新里オーナーから使用食材の説明がありました。今回の昼食で事前に準備した内容についてお客様へ説明することで、皆さん安心して食事を楽しんでいる様子でした。 

 
 

 デニスさんは沖縄タイムス社の取材に対し「ムスリムを受け入れるに当たって、難しく考える必要はありません。基本的にはアルコールと豚肉さえ避ければいいのです。アレルギー対応に比べると簡単です」と話します。

 ツアー参加者でインドネシア出身のナザヤ・ズライカさんは「沖縄は豚肉を食べる文化なので、これまで足が延びませんでしたが、今回、ハラールに配慮された和食が楽しめました。沖縄産もずくうどんがとてもおいしかったです」、シンガポールから来たカミサ・サラマットさんは「サンニンの葉を使った沖縄らしい和食の料理が美味しかった。沖縄でムスリムの対応をしてくれて嬉しい」と、それぞれ感想を話してくれました。

インタビューに答えるナザヤ・ズライカさん(写真左)とカミサ・サラマットさん 

 新里オーナーは「数年やってきたが、思っていたより難しくないというのが実感です。相手の考えを理解しようとする心構えやおもてなしの精神が重要だと思います。豚肉とアルコールを使わないこと、最低限の調理器具を用意しておくことなどはそんなに敷居が高くないので、飲食店でも難しく考えずに受け入れ体制づくりを進めていけたらいいですね」と話していました。

 今回「山吹」さんの受け入れ対応を取材して、異なる文化の方々のおもてなしというのは一定の手間がかかるものの、けっして難解な作業ではないということが分かりました。和食料理を食べ終え、店を出るムスリム観光客の方々の表情に満足感が漂っていたのが印象的でした。