千葉県野田市で虐待が疑われる事件で亡くなった小4女児と家族が2017年まで住んでいた沖縄県糸満市。市は2月、一家を巡るドメスティックバイオレンス(DV)や児童虐待情報を巡る当時の対応の検証を始めた。専門家は第三者性を担保した上で「DV・虐待を一体化した問題と考え、検証を急ぐべきだ」と提言する。(南部報道部・堀川幸太郎)

千葉県野田市の小4女児死亡事件を巡る質問が相次いだ糸満市議会3月定例会=19日

■虐待伝わらず

 糸満市によると、父親=傷害致死罪などで起訴=と離れ、女児と母親=傷害ほう助罪で起訴=は09年に市内へ引っ越した。16年に父親も市内に移り、別々に住んでいたが17年2月から同居し、同6月に次女が産まれた。直後に、一度退院した母親が親族に「夫の暴力を受け、怖い。娘もどう喝されていて、いずれ暴力を受けるのではないかと不安」と話した。同7月、親族は聞いた内容を基に市にDV・虐待を相談した。

 市は女児らが同8月に引っ越した野田市に、DV情報は伝えた。だが、虐待は「事実が確認できなかった」とし抜け落ちた。野田市の小学校で、女児は父親の暴力とともに「沖縄では、お母さんがやられていた」と訴えた。

 糸満市は当時のDV・虐待情報を巡って今年2月、行政や警察、学校、学識経験者らが虐待などの対応を話し合う市要保護児童対策地域協議会(要対協)で検証を始めた。

 厚労省の児童虐待に関する専門委員会で委員長を務める山縣文治関西大学教授(子ども家庭福祉)は、要対協が検証機関になることを疑問視する。「一家は要対協の見守り対象ではなかった。なぜかを考える必要があり、要対協は検証対象の一つ。当事者性が強く、第三者性が低い」とみる。

 山縣教授は第三者性を高める意味も込め、現在は検証メンバーに入っていない弁護士の追加を提案する。「自分も検証に参加していて、はっとする指摘を受ける。裁判など事実の積み上げを基とする視点に優れている」。DVや虐待に特化した知識、支援経験のある人に守秘義務を課して呼び、指摘を受ける方法もあるとする。

■検証、必要なだけさかのぼって

 糸満市は対応の検証対象期間について、親族からDV・虐待相談が寄せられた17年7月から、一家の引っ越し後に野田市に対して世帯の情報提供をした同10月までとする。DVに詳しいお茶の水女子大学の戒能民江名誉教授(ジェンダー法学)は「必要なだけさかのぼるべきだ」と指摘する。

 戒能氏は、DV被害者の心理に注目する。暴力や暴言、行動制限を繰り返され、無力感にさいなまれる本人が直接、相談に訪れる力は出せない。深刻さが分かっていたからこそ代わりに親族が相談に訪れた。なのに、市が親族からDVや虐待について聞いたのは、親族が最初の相談に役所へ来たときだけだった。「DVに対する理解度の低さが情報収集の手薄さを招いた。過去にさかのぼってDVがどう進み、どう見つけることができたか探ることは、家庭の問題として一体化している虐待の早期発見にもつながる」とみる。

 市は5月末をめどに検証結果を公表する。戒能氏は「DVや虐待被害者、家庭をどうケアするか。いま困っている人たちを見つけ、助けるためにも検証はもっと急がないといけない」と話した。