社説

社説[沖展開幕]こだわりの世界広がる

2019年3月24日 08:45

 自由で独創的、強いこだわりが感じられる作品を前に、足が止まった。「五百羅漢と新世界 チブルガンバル」というユニークなタイトルの2メートル級の大作。1年前の「沖展」でのことだ。

 誰が、どんなふうに描いたのか知りたくて、豊見城市の与那覇俊さん(40)を訪ねた。

 沖展への応募は3年前から。先の大作は浦添市長賞に輝き、今年は「耕せ!三島先生!!」で2回目の入選となった。

 誰もが生きやすい世界がテーマという。12色の油性ペンで理想とする「新世界」を描く。

 遠目にペルシャ絨毯(じゅうたん)のように見えた作品は、大小いくつもの場面で構成され、地球や風車などの絵のほか、文字や数式が細かく記されている。目に入った「大丈夫」という言葉について尋ねると、「心のお守りのような言葉」と答えてくれた。

 アイデアは描きながらわいてくる。下書きは一切しない。描き損じという概念もなく、しだいに全体がつながっていく。

 専門家は与那覇さんの絵を「従来の美術表現では捉えられない繊細で激しく、生きるとは何かを考えさせられる」と講評する。

 茨城大学在学中に精神疾患を発症した。卒業後、帰郷するも入退院を繰り返す苦しい時期を過ごした。

 絵と出会ったのは6年ほど前。現在は市内の地域活動支援センターに通いながら、日に4~5時間ペンを握る。

 見る人を特別な気持ちにさせる作品と、歩んできた人生は無関係ではない。

    ■    ■

 心の病で療養している人たちを対象とした芸術・文化フェスティバルでの入賞が、絵にのめり込むきっかけとなった。

 与那覇さんの作品は障がい者による芸術「アウトサイダーアート」としていくつもの賞に輝くが、昨年は新人芸術家の登竜門の一つといわれる「岡本太郎現代芸術賞」で入選を果たすなど、活躍の場を広げている。沖展の入賞・入選も障がいの有無に関係なく評価されたものだ。

 文化・芸術の振興に関する理念や施策について定めた文化芸術基本法は、「文化芸術を創造し、享受することは人々の生まれながらの権利」とうたう。 

 アウトサイダーアートは、正規の美術教育を受けていない人たちという意味では、広く大衆文化を指す言葉でもある。

 無名の表現者たちのこだわりの中に、明日のアートを切り開く可能性が見える。

    ■    ■

 春を彩る美の祭典「第71回沖展」がきのう、ANAアリーナ浦添(浦添市民体育館)で開幕した。

 絵画や彫刻、書芸など、一般応募の中から選ばれた583点と、沖展会員・準会員の力作262点が展示されている。

 沖縄の自然や文化、政治的課題に着想を得た作品が多いのが特徴で、表現せずにはいられないという作家の思いがひしひしと伝わる。

 強烈な個性を放つアートの世界を探索してみませんか。

沖展開催70周年を記念して、ウェブサイトを公開。これまでに開催された展覧会の図録を閲覧いただけるよう、デジタルアーカイブとして公開します。 >>「沖展オフィシャルサイト」

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