数年前、イタリア有数の観光地ベネチアの住民が、旅行者が多すぎて日常生活に支障が出ていると抗議デモを行い、ニュースになったことがある。

 観光客の急増に伴い住民生活や自然環境などに悪影響が生じる「観光公害」という言葉を、国内でも耳にするようになった。

 観光公害は「オーバーツーリズム(観光過剰)」とも呼ばれ、年間984万人余り、人口の7倍近い観光客が訪れる県内でも、同様の問題が指摘されている。 

 本紙で連載中の「やんばるオーバーツーリズム」によると、空き物件を利用したゲストハウスが増えている本部町で、宿泊客の夜中の騒音や無断で敷地内に入っての写真撮影などに苦情が相次いでいる。

 先のベネチアのデモは、観光客が増えすぎたことで逆に住民が引っ越しを余儀なくされた、と抗議するものでもあった。本部町のゲストハウス近くに住む住民からも「家を売り払って引っ越そうか」との声が出るなどマナー違反への不満が高まっている。

 観光は沖縄のリーディング産業だ。県は「世界水準の観光リゾート地」を目標に掲げている。

 沖縄観光を支える力は訪れた人を温かく受け入れる県民の「チムグクル」といわれるが、旅行者と住民のトラブルはその観光の魅力を低下させかねない。

 観光客が押し寄せることの負の影響に、もっと危機感を持つべきだ。

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 昨年、県が実施した沖縄観光に関する県民意識調査で、観光客が訪れる影響について尋ねたところ「交通混雑」「騒音やゴミの増加」「治安の悪化」を挙げた人が多かった。

 文化や習慣が違う外国人旅行者の急増が背景にあるのだろう。一般住宅に有料で旅行者を泊める「民泊」の広がりも関係している。宿泊や小売りなど恩恵を受ける業者と違って、負担だけを背負わされることへの住民の不満も強まっていると思われる。

 昨年、施行された民泊に関する那覇市条例は、民泊新法に上乗せして営業日数や区域を制限するものだった。住民の安全と静穏な環境を守ることを優先させた結果、より厳しいルール設定となったのだ。

 地域で起こっている摩擦やトラブルを把握し、実態を踏まえた具体策に知恵を絞る必要がある。

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 今月、観光振興のための観光目的税について検討してきた有識者委員会が、ホテルや民泊利用者を対象とした「宿泊税」の早期導入を県に提言した。

 税収の使途として、持続可能な観光地形成や受け入れ態勢の充実・強化などを求めている。

 観光客だけでなく県民が宿泊した場合も徴収される税である。市民生活との調和を図るために有効活用することで納税者の理解も深まるのではないか。

 オーバーツーリズムへの総合的対策に取り組む時期である。