93年前の3月25日、無政府主義者の男女が皇太子暗殺を企てたとして大逆罪で死刑判決を受けた。全国公開中の韓国映画「金子文子と朴烈(パク・ヨル)」は史実に基づき、でっち上げの逮捕、獄中生活、取り調べや裁判の様子を描く

関東大震災直後、デマに扇動され、分かっているだけで6600人余の朝鮮人が虐殺された時代の話。加害者の多くは市井の人々だった

▼日本人が朝鮮人を罵倒する場面の口汚い言葉は遠い昔の出来事ではない。100年近くたった今、ネット上や街頭で差別的なヘイトスピーチが飛び交う

▼日本年金機構世田谷年金事務所の所長が人種差別的なツイッター投稿を匿名で繰り返したことが分かり、更迭された。勤務中の投稿も疑われる。社会保障の公務の責任者が吐いた無数の差別表現のおぞましさ、本人特定後の「謝罪」と「改心」の言葉の軽さが耐え難い

▼先日は厚生労働省の課長が韓国の空港でヘイト発言しながら暴れて逮捕された。行政機関幹部にまん延する差別的な体質こそが「国難」ではないか

▼映画は主人公らを韓国人俳優が魅力的に演じるが、文子の過酷な生い立ちや内面の葛藤は十分には描かれない。大正から昭和への世替わりの時代、差別と闘ったカップルが実在したと知り、文子の自叙伝に触れる人が増えてほしい。那覇では5月、桜坂劇場で上映される。(田嶋正雄)