あれは小学5年だったか。算数の授業で担任の言われるがまま、ひもを使い、円の直径と円周の比を測った。3を少し上回った数値だったと思う。それぞれが結果を述べた後、正解は3・14と教えられたが、なんて半端な数字なのかと首をかしげたのを覚えている

▼不規則な小数点が無限に続き、ギリシャ文字πで表される「円周率」。米IT大手グーグルは、小数点以下約31兆4千億桁まで計算し、従来の世界記録を約9兆桁上回ったと発表した

▼πを初めて厳密に計算したのは紀元前3世紀の数学者アルキメデス。円に内接する正多角形の周の長さは円周より短く、外接する正多角形は長いことを用い、正96角形で計算。約3・1408以上で約3・1428未満と導き出した

▼今日使われるπの近似値を2千年以上前に特定していたことに驚く。以来、より正確な値を得ようと、古今東西で模索が重ねられてきた

▼実際、最先端の科学の現場では何桁まで必要なのか。米航空宇宙局(NASA)が探査機「ボイジャー1号」の軌道計算で用いたのは15桁。今回の世界記録がいかに途方もない到達点なのかが分かる

▼かつて小学校の学習指導要領で「目的に応じ、3を用いて処理できる」とされ、波紋を呼んだ。物事の理(ことわり)の奥深さに触れる原体験には、あの半端な数字がふさわしい。(西江昭吾)