88歳のアブラハムはポーランド生まれのユダヤ人。少年時代、死の行列を抜け出した彼は友人の助けで、家族で唯一、ホロコーストを生き延びた。戦後はアルゼンチンに暮らし、「ドイツ」「ポーランド」という恐怖の言葉を発したことはない。

家へ帰ろう

 そんな彼の家族は娘ばかり。にぎやかな娘たちの中でポツンとしていたら、老人ホームに入ることがトントン拍子に決まり、苦言も拒否も華麗にスルーされる。だから家出した。命の恩人に会うため、ポーランドへの一人旅。

 道中、宿の女主人に優しくされてヘラヘラしていたら財布を取られ、絶縁した娘に金を無心して軽蔑され、ドイツ経由は嫌だ!と駅で、だだをこねる。戦後70年、ずっと傷だらけなのに、感傷に浸る暇のないドタバタ珍道中。

 面白いのに辛くて、悲しいのに笑える物語。(桜坂劇場・下地久美子)

桜坂劇場で30日から上映