雇用主と契約し就業する労働者は、少なくとも年に1度、雇用主の責任において決められた健康診断を受ける必要があります。労働安全衛生法によって定められている規則です。

イラスト・いらすとや

 自ら進んで受ける人間ドックや市町村で実施される一般健診、特定健診の結果を職場に提出して、その一部を代用することもできます。

 日々の診療で、この基本的なことがうまく守られていない事例に出会うことがあります。その多くは、知人と数人で立ち上げた事業所に勤めておられ、雇用主と契約し就労しているという形となっています。職場の例としては、建築物を解体し廃棄する、廃棄物を回収する、お弁当をつくる、最近では、入居者を介護する老人ホームとさまざまです。いずれも規模としては小さな事業所です。その中には、騒音や粉塵(ふんじん)など有害業務に携わる必要のある所もあります。

 40代の男性が、かぜ症状のため診療所に来院しました。受診時の血圧が高めで、経過をみていくことにしました。何度目かの再診時、彼が建物の解体作業に従事しており、コンクリート等の粉塵が舞う環境で仕事をしていることを知りました。屋外作業ではあったのですが、私は、呼吸器系、特に肺への影響が心配になりました。職場の健康診断について尋ねてみたのですが、これまで受けたことがないとの返事でした。そこで、近く実施される村民健診への受診をアドバイスしました。

 幸い、胸部レントゲン検査をはじめ、大きな異常はなく、ほっとしました。そして、本人に健康診断の法的な取り決めについて説明しました。彼は、雇用主、同僚とこのことについて話しあい、今後は、職員全員で村民健診を受けることに決めたそうです。

 小規模事業所には、産業衛生を専門とするスタッフ配置は、義務付けられてはいません。そこで、私たち、かかりつけ医が、安全で衛生的な労働環境づくりのお役に立てるのではないかと考えています。(涌波満 ファミリークリニックきたなかぐすく)