赤く、花弁が筒状に細長いのは知っている。だが複雑な花の正確な形や、雄しべ雌しべの構造などは、いまだによく分からない。小さいころから身近にあったはずのデイゴの木
▼最近見かけないと思っていたら、大宜味村の国道58号沿いにある大木が真っ赤な花を満開にしていた。でこぼこの幹から、幾重にも大きく張り出した太い枝。威風堂々の立ち姿に、しばし見ほれた
▼「デイゴの花が咲き、風を呼び嵐が来た…」。THE BOOMの「島唄」は戦争を嵐にたとえたが、かつて、デイゴがよく咲く年は台風が多いといわれた。根が土中から盛り上がり「屋敷コーサー(屋敷壊し)」とも呼ばれた
▼那覇市では通学路のアスファルトが押し上げられて壊され、危険だと問題にもなった。台風を呼んだり、家を壊したり。「厄介者」のレッテルは、当のデイゴには迷惑な話
▼それほど沖縄の風土に根ざし、赤瓦の風景になじんできた巨木だが、天敵はデイゴヒメコバチという小さな虫だ。2005年に石垣島に侵入、1年で県全域に広がった
▼枯死した木もある中、県は低コストのヒメコバチ防除技術を確立させた。ウリミバエ根絶や松食い虫対策と、小さな強敵との闘いは容易ではない。先のデイゴは今、花が散り、青々とした葉を気持ちよさげに広げている。守ってほしい。(儀間多美子)