国際協力機構(JICA)本部職員 国吉大将さん(26)=西原町出身
 

 開発途上国を支える日本の政府開発援助(ODA)の中核を担う機関で、アジアとの懸け橋となっている。担うのは途上国の中小企業振興と貿易・投資促進。「常に現地の目線に立ち、イシュー・ファースト(問題先決)の姿勢を忘れない」。国際協力の最前線で望むのは人々の笑顔だ。

「途上国支援は日本企業進出の足掛かりにもなる」と語る国吉大将さん=東京都千代田区・JICA本部

 2010年夏の甲子園。興南高校野球部の三塁コーチャーとして春夏連覇の瞬間を見届けた。憧れの聖地で打席には立てなかったが、「努力を重ね、頂点に立つことはそれだけで価値があると教えてくれた」と当時を振り返る。「野球を終えてからも人生のスコアボードは続く」。常日頃、我喜屋優監督の薫陶を受け、目指す進路は早くから決まっていた。「世界平和に貢献したい」

 テレビのドキュメンタリーで、紛争地に飛び込んで武装勢力と途上国政府の対話を促す「平和構築支援」という存在を知った。幼い頃、沖縄戦の語り部をしていた祖父から戦争の悲惨さを聞かされていたことも原体験となった。

 早稲田大学時代は、戦争孤児として留学していたソマリアの学生らと共に団体を立ち上げ、ケニアのソマリア難民居住区を訪れた。現地で目にしたのは、紛争に疲弊し、夢や希望があっても実現する機会や術がない人々。紛争は一元的な考え方では解決できないと痛感した。「いかに持続可能な支援ができるか。自立には経済の力が必要だ」

 英語力の向上も兼ねて、英国の大学院に進学。経済学修士を取得後、18年4月に念願の国際協力機構(JICA)に入った。研修で3カ月滞在したミャンマーでは、現地の中央銀行と協力して貧困者向けの融資制度の新設に関わった。また、鉄道などのインフラ整備などの現場に触れ、「国づくりの根幹に関わるダイナミックな仕事」とやりがいを語る。

 現在はラオスの産業振興を主担当とし、専門家の派遣を通じた経営層や起業家のビジネススキル向上や製品開発効率改善など、人材育成も含めたプロジェクトに奔走する。働きぶりは「真摯(しんし)に取り組み、実務経験も習熟している。途上国の人々との橋渡しになってほしい」と上司からの期待も大きい。

 苦楽をともにした野球部の同期は今でも特別な存在。「プロ野球ソフトバンクの島袋洋奨ら厳しい世界で野球を続ける仲間の存在は勇気をもらえる」と話す。「経験を積み、ソマリアの人々を笑顔にすることが目標。いつかは沖縄と世界をつなげたい」。確かなビジョンを熱い心が支えていた。(小笠原大介東京通信員)=連載・アクロス沖縄<105>

 【プロフィール】くによし・たいしょう 1992年西原町生まれ。宜野湾ポニーズを経て興南高校で甲子園春夏連覇を達成。早大社会科学部を卒業後、英ウォーリック大学大学院で修士を取得。18年4月JICAへ。「産業開発・公共政策部民間セクターグループ第一チーム」として、主にラオスやカンボジアなどで中小企業振興や貿易・投資促進を担う。甲子園に出場した双子の弟大陸さんは都内で公認会計士として活躍。