「ファッション界の母」と呼ばれた元文化服装学院長の小池千枝さんが5月28日、98歳で亡くなった。コシノジュンコさんや高田賢三さんら世界的なファッションデザイナーを数多く育てた

▼沖縄を代表するデザイナーの仲井間文子さん(79)も教え子の一人。小池さんがパリで身に付けた「立体裁断」を日本で初めて紹介した時で画期的な授業に胸をときめかせ学んだ

▼沖縄の染め織物にも関心が高く、学生の仲井間さんに尋ねることもたびたび。仲井間さんも帰省の時に集めた絣(かすり)や芭蕉布(ばしょうふ)の端切れを贈った

▼小池さんの夫は沖縄戦で戦死した。夫婦ともに長野県出身。毎年のように、糸満市摩文仁にある長野県の慰霊搭で手を合わせていた。仲井間さんは「学生のときは知らなかった。夫が亡くなったところで沖縄に思い入れがあったのでしょう」と話す

▼来県のたびに講習会を開き、洋装に携わる人々に第一線の技術を教えた。小池さんは「沖縄の洋装を育て、多くの女性の社会進出を支えた大恩人」(仲井間さん)という存在だ

▼国内有数の人形コレクターとしても知られ、首里婦人手芸同好会の故徳村光子さんの琉球人形も愛蔵品。「大変精巧。沖縄の特色ある文化を表している」と高く評価していた琉球人形は、小池さんの故郷・長野県須坂市の人形博物館に展示されている。(与那原良彦)