先週は県高校総体の1週間だった。3年生は部活動の集大成。自己の記録、ボールの行方、ライバルとの競り合いに一喜一憂する打算のない若さが、日常に追われる大人の目にはまぶしく映る

▼ボクシングのバンタム級決勝は宜野座の平田貢大選手と那覇の上間北斗選手が意地をぶつけ合った。互いに足を止めての打ち合い。両者の「負けたくない」という気迫が荒い息遣いとともにリングサイドに伝わった

▼結果は平田選手が2対1の判定勝ち。ジャッジ全員が1ポイントの僅差だった。試合後、自力で歩けず仲間の支えでリングを降りる勝者の姿が激闘を物語っていた

▼敗れた上間選手は北大東村出身。高校進学で島を離れる際の恒例行事「親子相撲」で父親を倒す様子が本紙連載「十五の春」で紹介された

▼進学後、那覇での生活に慣れず不登校になりかけたころ、ボクシング部に誘われた。目標を見つけ、厳しい練習に取り組む中で立ち直るきっかけをつかんだという。最後の総体で敗れ「このままで終わりたくない」と悔しさをかみしめた

▼バスケットボール漫画「スラムダンク」で敗戦校の監督が選手にこんな言葉を掛ける場面がある。「負けたことがあるというのが、いつか大きな財産になる」。積み重ねたプロセスは決して無駄ではないはずだ。敗者たちの明日にエールを送りたい。(田嶋正雄)