沖縄より1カ月遅れで関東も梅雨入りした。雨の日は、窓辺越しの物思いに誘われる風情もあるのだが、前線が登場した直後から、災害をもたらす豪雨に見舞われた。暴れ梅雨にならないかと、気をもんでいる
▼6月の新聞を開いて思い出すのは、佐世保市の小6同級生殺害事件。当時、出向先の新聞社で取材に加わった。あの日も雨だった。むごい事件に気も沈み、雨を吸ったスーツや革靴が足取りをさらに重くし、ぐったりした記憶がある
▼あれから10年がたった。事件時、中学3年だった被害女児の兄(24)は5月、公の場で初めてマイクを握り苦しさを打ち明けた。父親が死ぬのではと心配して気丈に振る舞った。妹のため何かできなかったかと自分を責めた。喪失の涙と落胆の嘆息を繰り返した年月だったであろう
▼癒えない記憶の痛みを肌身に感じながらも、前を向いて歩き出さなければならないのも人生である。後悔を一生抱えるという兄は、被害者支援の道へ歩き始めた
▼6月は、大阪の池田小や東京の秋葉原でも、無残に命が奪われる事件があった。沖縄の慰霊の日も含め、心静かに冥福を祈りたい月である
▼佐世保の小学校の児童らは1日の追悼集会で誓った。「命を大切に生きていきます」と。雨よ、どうか穏やかに降っておくれ。せめて悲しみをもたらすことなく。(宮城栄作)