親からの虐待や非行などの困難を抱えた子どもたちの緊急避難先として、NPO法人子どもシェルターおきなわが沖縄本島内で運営する「月桃(サンニン)」が1日で開設から3年を迎えた。2018年度末までに12〜21歳の少女ら延べ44人を受け入れ、衣食住の支援のほか、一人一人に担当弁護士が付き親権者や学校、支援機関との調整役を担ってきた。親子関係を改善し家庭復帰した入所者が約4割を占める一方、自立を支える居場所が限られ退所後の受け皿が見つかりにくい現状がある。(学芸部・新垣綾子)

元入所者の女性。「シェルターでの2カ月間は、自分を見つめ直し、母親の愛情に気付いた大切な時間だった」と振り返った=5日、那覇市・沖縄タイムス社

子どもシェルターのある日の食事。職員や有償ボランティアによって、温かい家庭料理が日々振る舞われている(NPO法人子どもシェルターおきなわ提供)

入所者の居場所(2016〜18年度)

元入所者の女性。「シェルターでの2カ月間は、自分を見つめ直し、母親の愛情に気付いた大切な時間だった」と振り返った=5日、那覇市・沖縄タイムス社 子どもシェルターのある日の食事。職員や有償ボランティアによって、温かい家庭料理が日々振る舞われている(NPO法人子どもシェルターおきなわ提供) 入所者の居場所(2016〜18年度)

自立支える居場所少なく

 緊急避難先の性格上、場所は非公開で、入所中はスマホなどの通信手段や外出も制限される。多感な未成年者たちには不便な環境だが「自分の気持ちを整理し、冷静に家族と向き合う大切な時間だった」と語るのは、元入所者の女性(19)だ。女性は高校3年の冬に2カ月間、シェルターに滞在。大学受験を控えて気が張っていた頃で、母親との感情的なすれ違いから家を飛び出し、行政を介してシェルターにつながった。

 「あんたのやることなすこと全てが私を怒らせる」。入所前、母親のそんな一言に傷ついたという。同じ時期、自分の知らないところで発達障がいの疑いを指摘されていた過去を姉から打ち明けられた。

 複数の物事の同時進行が苦手だったり、悪気もないのに人を傷つけたり…。女性は「他人と違う自分」に、人知れず悩み続けたそれまでを振り返り「何で教えてくれなかったのか」と母親への不信感を募らせた。精神的に不安定になり、高校からも足が遠のいた。

 シェルターでは入所者1人に対し、基本的に2人の弁護士が付く。女性を担当した一人、松本啓太弁護士(38)は女性の様子を「1カ月以上、家に帰りたくないの一点張りだった」と話す。松本弁護士らが親子の間に入って双方の思いを橋渡しし、高校には課題提出による単位取得を交渉した。

 「シェルターと聞くと、ひどい虐待から逃れてきた当事者を思い浮かべがちだが、安心できる居場所がない子や18歳以上など、児相では保護しづらい隙間を埋める支援も開設目的の一つ」と、松本弁護士は広く活用を呼び掛ける。

 家庭的な雰囲気が女性のかたくなな心を解きほぐし、手紙のやりとりから始めた親子は入所から1カ月半がたったころ弁護士同席の面会にこぎ着けた。女性はこの過程で、母親が突然シェルターに入った娘を心配し弁護士に泣いて連絡してきたことや、前年に父親が亡くなってひとり親となり、心身に余裕がなかった事情を理解した。間もなく同居を再開した。

 女性は今、アルバイトなどで日々を過ごす。学びたい気持ちもあり、将来はまだ見通せないが、母親は「焦らないでいい。他人と比べないでいい。あなたはあなただから」と応援してくれる。「誤解がなくなり、素直に気持ちを伝えられるようになった」と女性から笑みがこぼれる。シェルターでの時を経て、親子の絆はぐっと深まった。

支援者、受け皿の整備訴え

 本島内の住宅街に、一軒家を借りた子どもシェルターがある。開設当初からホーム長を務めるのは、儀保由美子さん(66)。元県職員で児童相談所(児相)や児童自立支援施設などで経験を積んだ児童福祉のベテランだ。

 「温かいご飯を食べて暴力のない清潔な空間に身を置いてやっと、子どもたちは自分のことを考えられる。表情や言葉が変化し、解決策が見い出せた時に大きなやりがいを感じる」

 入所者の背景には虐待のほか親子関係の不調、非行や発達障がいが複合的に絡んでいることが少なくなく、支援者は本人の希望を聞きつつプラスになる方向性を見極める。

 この3年で、儀保さんが改めて実感したのは「児相の保護対象から外れた18歳以上の未成年者は、就職するにも部屋を探すにも親の同意や収入の壁が立ちはだかり、生きにくいケースがあること」だという。

 シェルターの役割はあくまで一時的な避難場所で、受け入れは2カ月がめど。家庭復帰が難しい場合は退所後の受け皿探しに駆け回るが、県内には義務教育終了後から20歳まで受け入れる自立援助ホームが1カ所しかなく、就労を支援するシェアハウスも限られる。

 4カ月以上、退所先が決まらない入所者もいて、儀保さんは支援機関の拡充とともに「子どもの貧困対策として、行政が若年者向けの低家賃住宅を提供してはどうか」と投げ掛けた。

 問い合わせはNPO法人子どもシェルターおきなわ(横江崇理事長)、電話098(836)6363。