社説

社説[桜田五輪相更迭]許せぬ被災地への愚弄

2019年4月12日 07:49

 失言を繰り返していた桜田義孝五輪相が辞任に追い込まれた。

 桜田氏が自民党の同僚議員を「復興以上に大事」と発言し、安倍晋三首相から事実上、更迭された。

 桜田氏が東日本大震災の被災地を地盤とする自民党衆院議員のパーティーのあいさつで飛び出した。被災地を愚弄(ぐろう)し、被災者を傷つける発言である。更迭は当然だ。

 桜田氏はこれまでにも失言を重ねてきた。ことし3月には、東日本大震災の津波被害に関連し「国道や東北自動車道が健全に動いていたから良かった」と事実誤認の発言をし、翌日に謝罪・撤回している。参院内閣委員会では被災地の宮城県石巻市を「いしまきし」と3回言い間違えた。

 相次ぐ失言に閣僚としての資質が問われ続けてきており、辞任は遅きに失したというほかない。

 安倍政権下では、被災地を軽視するような失言は過去にもある。2017年に、今村雅弘復興相が震災被害を「まだ東北でよかった」と発言し、辞任した。

 桜田氏の辞任は、5日に塚田一郎国土交通副大臣が道路建設計画を巡る「忖度(そんたく)」発言で辞めてから、1週間もたっていない。

 率先して復興のかじ取りと東京五輪・パラリンピックの成功に向けたけん引役となるべき五輪相の存在意義も問われる。

 安倍政権が掲げる「復興五輪」とはほど遠い発言が閣僚から続くのは、内閣全体で復興に取り組む姿勢が希薄化しているからではないか。

    ■    ■

 最大震度7を観測した東日本大震災では青森、岩手、宮城、福島各県を中心に大地震だけでなく、大津波による甚大な被害が出た。東京電力福島第1原発事故は収束のめどもたっていない。

 除染や生活インフラ整備が進む中、依然多くの区域で避難指示が続き、被災者が避難生活を強いられている。福島県の内堀雅雄知事は桜田氏の発言に「震災と原発事故から8年が経過したが、復興はいまだ途上で、国の最優先課題だ」と指摘する。

 桜田氏の発言から更迭までのスピード収拾は安倍政権が、度重なる閣僚の失態で、直近の統一地方選、夏の参院選への影響を抑えたい思惑があるのだろう。

 安倍首相はこれまで野党が求めてきた桜田氏の罷免を実行する機会があったにもかかわらず、拒否してきた。身内への甘さを露呈し、批判は免れない。

    ■    ■

 安倍政権下で相次ぐ閣僚の辞任は、長期化する「安倍1強」のおごり、緩みが続いているからである。安倍首相の任命責任は厳しく問われるべきである。

 安倍首相は「内閣全体で信頼を回復し、復興に向けて全力を傾ける」などと語ったが、内閣全体の被災地復興に取り組む切実さは十分に伝わってこない。

 「復興五輪」を目指すならば、まずは被災者の信頼を取り戻すことだろう。「寄り添う」という言葉だけでなく、復興支援を着実に行動で示すことが重要だ。

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