米ニューヨーク・ブルックリン生まれの社会運動家でラッパーの「メガサイフ」(本名マイルズ・トーマス)さん(44)は、名護市辺野古の新基地建設反対などのメッセージをラップに乗せて全米を回っている。4月にはニュージャージー州やニューヨークでのイベントを終えた。

 トーマスさんの4分40秒のラップは出だしで「米国が生まれない前に400年も続いていた琉球国が日本により強制併合され、そして米国の攻撃、無数の命が失われた」と歌う。

 人権を強調し、オスプレイ反対を掲げ、基地を封鎖せよとのメッセージ。キャンプ・シュワブにいた元海兵隊員で、軍を出た後、自分はもう軍の所属品ではない。今は言葉で表現できるとし、しっかりとした発音で「命(ぬち)どぅ宝」と繰り返す。

 シュワブ勤務中の1995年には米兵暴行事件があり、衝撃的な思いを抱いて沖縄を去った若者はその後、孤独と深い困惑のはざまにいた。「沖縄での生活を忘れたかった」という。

 結婚し長男が8カ月の頃、父親になった自分を見つめ直した。自らのトラウマに焦点を当てて真っ向から取り込もうと活動家として文章や詩などを書き始めた。

 2013年に退役軍人の「ベテランズ・フォー・ピース」の会員になり平和運動を始めた。会員たちで沖縄を訪問。新基地建設で海が破壊されていくのに断固として反対する市民、一方で彼らの自己決定権を踏みつぶし、尊厳を無視している日米両政府の態度を目の当たりにした。

 沖縄戦の映像を見たり、「命どぅ宝」の意味を知ったりもした。沖縄のことをラップにして米国人に知らせようと決めた。

 米国には沖縄がどこにあるのかも知らない市民が多い。2月の県民投票で投票した7割超の人が「辺野古反対」だった結果も知られていないし、そもそもあんな小さな面積の島に多数の米軍基地がある、という事実も分かっていない人が多い。

 私は彼のラップを初めて聴いた瞬間、沖縄戦から私たちきょうだいを守った強い母の顔が浮かんだ。避難する前に配られた手りゅう弾を使わなかった母は「命どぅ宝」を優先した。トーマスさんの語る歌詞は、タイムスリップで戦時中の母と幼い自分たちを思い出させたのだ。

 「命どぅ宝」は沖縄の平和を求める叫びだ。「マジュン チバラーヤー」と闘いの掛け声でもある。ニューヨークのイベントを見に行った友人が「熱演に最後は観客も声を合わせて『命どぅ宝』と繰り返し、ニューヨークの真ん中で沖縄への応援、反基地への思いがこだました」と感想を話してくれた。

 米国中を回るトーマスさんは「辺野古で座り込む人たちの姿を思えば何でもない。ラップを歌って活動する自分が癒やされていく過程が分かる」と話している。(てい子與那覇トゥーシー)=第4月曜日掲載

(写図説明)「辺野古の米軍基地をストップせよ、沖縄県民投票では『絶対NO』が示された」と掲げるマイルズ・トーマスさん=5日、米ワシントン・ホワイトハウス前