大弦小弦

[大弦小弦]今年のカレンダーには…

2019年4月29日 10:15

 今年のカレンダーには天皇誕生日の祝日がない。現行の12月23日はもう令和になっているし、皇太子さまの誕生日は去る2月23日で、まだ平成だった

▼そんな中でも、昭和天皇の誕生日はきょうの「昭和の日」として祝日に残っている。明治天皇は11月3日の「文化の日」。「明治の日」と呼び直す動きもある。一方、病弱だった大正天皇の8月31日は没後、顧みられることもない

▼同じ天皇誕生日なのに扱いに差がある。説明はない。天皇を尊ぶかに見える人々も、実は祝賀と黙殺を使い分けている

▼天皇の地位は中世の武家からマッカーサーまで、時々の権力者に利用されてきた。沖縄にはそのしわ寄せが特に色濃く表れた。「天皇陛下万歳」の叫びが沖縄戦の惨劇「集団自決(強制集団死)」の引き金になった。昭和天皇は地位を使って、沖縄の軍事占領継続を米国に提案した

▼作家の坂口安吾が敗戦直後、エッセーに書いた。満員電車に天皇が乗っているとして、それに気付いた人が「サアサア、天皇、どうぞおかけ下さい、と席をすゝめる。これだけの自然の尊敬が持続すればそれでよい」

▼つくられた権威ではなく、人に敬意を払うことを説いた。当時は退位を含めた議論が盛んだった。天皇が自らの意思で退位する今回、天皇制を考え直す機会をつくれなかったことを悔やむ。(阿部岳

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