皇太子さまがきょう新天皇に即位し、「令和」が始まった。

 昭和天皇が逝去して「自粛」の波が広がった平成改元時とは違い、祝賀ムードに包まれた新時代の幕開けである。

 天皇は憲法1条で「日本国の象徴であり日本国民統合の象徴」と位置付けられている。「国民に寄り添う」象徴像を築いた前陛下の後を継ぐ天皇陛下は、自分流の象徴像をどうつくり出していくのか。

 皇太子として最後となった今年2月の誕生日会見で、即位に向けての心境をこう語っている。
 「国民に常に寄り添い、人々と共に喜び、あるいは共に悲しみながら、象徴としての務めを果たしたい」

 戦争犠牲者を追悼する慰霊の旅や被災地への見舞いを続けてきた平成流を「道しるべ」にしたいとの決意である。

 皇室の在り方については「その時代時代で新しい風が吹くように」と語った。

 新天皇即位により、皇位継承資格者は3人に減り、皇太子もいなくなった。男性皇族の減少や高齢化など皇位継承問題は深刻化している。

 今は封印されているが、女性天皇と女系天皇を認めようとの議論が過去にはあった。「男系男子」に限る皇位継承は、男女平等の見地からも疑問が残る。

 さらに今回、退位の恒久制度化を見送って一代限りの特例法としたことは、将来に課題を残す結果にもなった。 

 政治はこれまで「象徴天皇制」を巡る議論を避ける傾向が強かった。もはや先送りは許されない。

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 戦時中に少年時代を過ごした体験が原点なのだろう。前陛下は1989年の天皇即位時、「憲法を守り、これに従って責務を果たす」との決意を表明した。昨年12月の在位中最後の会見では「平成が戦争のない時代として終わろうとしていることに、心から安堵(あんど)している」と述べた。

 憲法の平和主義を大切にしたいとの思いは、終戦の日、広島と長崎の原爆の日、沖縄慰霊の日を「忘れてはならない四つの日」として欠かさず黙とうしていることからも読み取ることができる。

 とりわけ、地上戦で多くの犠牲者を出した沖縄には特別な思いを持ち続けてきた。

 戦後生まれの新陛下は、平和を求める思いをどのように形にしていくのか。

 戦争体験者が急速に減りつつあるだけに、平和の尊さを説得力のある言葉で語っていく必要がある。

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 新陛下を待ち受ける内外の情勢は厳しい。宗教対立の深まりや移民排斥の広がり、自国第一主義の台頭など国際秩序は激しく揺らいでいる。

 国内にあっては少子高齢化が急速に進み、子どもの貧困など格差が拡大。差別感情をむき出しにしたとげとげしい言論が広がったのも平成の時代である。

 多くの国民が令和の時代の到来を歓迎したのは、平和で明るい未来であってほしいという切実な願望からだ。希望の持てる社会の実現こそが新たな時代の大きな課題であり、きょうの日をその第一歩と位置付けたい。