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ドローン規制法改正案 専門家に論点を聞く 参議院で審議へ

2019年5月9日 05:00

 基地周辺で小型無人機ドローンの飛行を禁止するドローン規制法改正案は衆院を通過し、議論の舞台は参院に移る。ドローンパイロットの第一人者でレイブプロジェクト代表取締役の請川博一氏と、元毎日新聞編集局次長で早稲田大学政治経済学術院教授(ジャーナリズム研究)の瀬川至朗氏に論点を聞いた。

ドローンを操縦する請川博一氏=1月

インタビューに答える早稲田大学政治経済学術院の瀬川至朗教授=同大

ドローンを操縦する請川博一氏=1月 インタビューに答える早稲田大学政治経済学術院の瀬川至朗教授=同大

技術の発展止めないで

請川博一氏(レイブプロジェクト代表取締役)

 -改正案の影響をどう見るか。

 「基地周辺の飛行禁止は、特に沖縄では影響が大きい。2年前、農薬散布のデモフライトで沖縄を訪れた。昔の無人ヘリは約1500万円したが、今のドローンは同じ性能でも約200万円になっている。これならいける、ハブの心配も少なくなる、とJAや県の担当者から評価を受けた。大規模に飛行規制されると、沖縄だけICT(情報通信技術)農業を諦めることになりかねない。農林水産省の政策にも矛盾する」

 -周辺約300メートルという距離にはどういう意味があるか。

 「時速90キロのドローンなら12秒で突破されてしまう距離。撃退は間に合わないはずだ。真剣に考えるなら3千メートルは必要で、合理的ではない。テロ対策という名目だが、真の目的は報道規制ではないか」

 -テロ対策に反対する人はいない。

 「テロや事故の防止はもちろん必要だが、対策はもう実用化されている。世界最大手メーカーDJIのドローンは衛星利用測位システム(GPS)で位置を確認して、空港などの周辺では原則モーターが回らないようになっている。携帯電話のSIMカードを搭載する動きもあり、そうなれば上空を飛ぶドローンもすぐ個体識別できる。身元がはっきりしている機体には問題はない」

 -ソフト面の対策は。

 「ドローンの登場以前から使われている無人ヘリの世界ではメーカーによる対面販売、講習、登録、機体管理がしっかりしている。産業用ドローンはこのような仕組みに沿って厳格に管理する代わりに自由な飛行を認める、ホビー用は安全面を重視して飛行を規制する、というすみ分けをすべきではないか」

 「誰でも買ったその日から飛ばせるようになった一方、操縦技術や基礎知識が追い付いていない。指導者の養成が急務で、技能認定会を開いている」

 -ドローンは今後、私たちの生活をどう変えるか。

 「インフラ点検、農作物の生育管理、宅配便など、ドローンが一般の人にとって一気に身近になろうとしている。今年はいわばドローンの社会への貢献元年。その節目に、不合理な規制で技術発展を止めないでほしい。正しい方向に進むことを願っている」(聞き手=編集委員・阿部岳

 うけがわ・ひろかず 1961年北海道旭川市出身。ラジコンヘリの時代から空撮歴32年。テレビ局、CM、映画の撮影などで、年間300日以上ロケをし、2千回以上飛行する。NHKの番組「プロフェッショナル 仕事の流儀」にも取り上げられた。

報道目的の除外明示を

瀬川至朗氏(早大政治経済学術院教授)

 -メディア規制の観点から法案の問題点は。

 「法案のタイトルは、いわゆるドローン禁止法の一部を改正する法律となっているが、実際は重要施設上空の飛行を規制する恒久法と、ラグビーワールドカップや東京五輪・パラリンピック期間中の両特措法の二つの法律の改正だ。それを一つの法案にしているところに、米軍基地上空の規制など本当の目的を隠そうとする政府の意図を感じる」

 「内閣官房ホームページに掲載されている法案の概要は、冒頭の説明でラグビーや五輪のテロ対策を挙げる。恒久的に規制対象となるのは防衛関係施設だが、特措法をメインに説明している。世界から人が集まる大会というと、テロ対策という理由が一般的に理解を得られやすい。それを利用しているのではないか」

 -新基地建設が進む名護市辺野古上空の飛行に関し、米側が対応を求めてきた経緯がある。法案は米側の同意があれば飛行できるとしているが、知る権利や報道の自由を担保できるか。

 「各選挙で県民が辺野古反対の意思を示し、政府が工事を進める正当性を失っている。公共の場で国民と対等に議論しないといけないのに、議論の重要な素材になる辺野古の撮影を、一方の当事者である政府や米側が同意しなければできないというのはおかしい。オープンに取材できないと知る権利に答えられない」

 「政府は報道規制が目的でないとするなら、それを法案に明示的に盛り込むべきだ。法改正の背景の一つに辺野古の問題があり、上空での撮影を制限したいのは事実だと思う。報道規制が目的でないなら、同意制にする必要はない」

 -日本新聞協会などが規制反対の意見書を出しているが、議論が広がらない。

 「民間放送連盟も憂慮する意見書を出している。報道は法の規制から除外するよう強く求めるべきだ。全国紙を見ると、毎日新聞が辺野古取材の視点から法案の問題点を指摘していたが、ほとんどは『意見書を出した』『委員会で可決された』といったニュースを短く掲載するだけで、問題意識がかなり希薄に見える。新聞やテレビ、ネットメディアは、国民の知る権利の制限につながる危険な法案だという認識を持ち、議論を呼び掛ける必要がある」(聞き手=東京報道部・大城大輔)

 せがわ・しろう 1954年岡山市出身。毎日新聞社でワシントン特派員、科学環境部長、編集局次長、論説委員など歴任。現在、NPO法人「ファクトチェック・イニシアティブ」と同「報道実務家フォーラム」の理事長をそれぞれ務める。
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