もはや特別な選択とはいえない。治療と仕事の両立など多方面からの支援が必要だ。

 体外受精など特定不妊治療によって妊娠に至ったケースが2017年1年間で880件に上ったことが、県のまとめで分かった。治療への公的費用助成が始まった05年から15倍近くも伸びている。

 晩婚化を背景に不妊に悩む夫婦が増え、助成がその背中を押したことなどが要因とみられる。沖縄の場合、男児跡継ぎ意識が強いトートーメー(位牌(いはい))継承も少なからず影響しているといわれる。

 日本産科婦人科学会の調査によると、16年に国内で体外受精によって生まれた子どもは5万4110人で過去最多を更新した。赤ちゃんの18人に1人という計算だ。県内の数字もこれに近く、以前に比べ治療が身近なものになっていることがうかがえる。

 「妊活」という言葉の一般化が示すように、不妊治療を受けるカップルは今後も増えると予想される。

 働く女性が増える中、社会的な課題になっているのが仕事との両立だ。

 治療経験者の16%が両立できず退職し、8%が雇用形態を変えたという厚生労働省のデータがある。

 治療は女性の排卵周期に合わせる必要があることから、頻繁な通院と予定の立てづらさが大きなハードルとなっている。プライベートな問題であり、上司や同僚に打ち明けるのをためらう人も少なくない。治療の浸透とは裏腹に、18人に1人という数字を実感しにくいのはそのためだ。

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 厚労省が作成した「仕事と不妊治療の両立支援のために」というリーフレットに、治療を目的とした休暇制度や出退勤時刻の調整ができるフレックスタイム制の導入、従業員のライフプランを支援する相談窓口の設置など、企業の先進的取り組みが紹介されている。

 県内でも沖縄銀行が4月から不妊治療に専念することを可能とする「ライフプラン休業」をスタートさせている。1回の申請で最長2年休めるといい、離職を防ぎ、ワークライフバランスを向上させる狙いがある。 

 女性の問題だと思われがちだが、男性が治療を受けるケースも少なくない。仕事との両立でいえば、患者の多いがん治療でも課題になっている。

 職場の理解を深め、柔軟な働き方を認めていくことは人材戦略の上からも重要である。

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 健康保険が適用されないため1回30万~50万円とされる費用も課題だ。当事者らでつくるNPO法人の調査では、経済的な理由が治療の継続に影響したと答えた人が半数を超えた。

 公費助成の利用は広がるものの、回数や金額には上限があり十分とはいえない。

 他方、費用や時間をかけても子を授かるとは限らないのが不妊治療である。年齢的な限界もある。

 家族の形は多様化している。親が育てられない赤ちゃんを迎え入れる「特別養子縁組」などの選択肢も心に留めておきたい。