結婚には向かないタイプの人間がいる。

ライムギ畑の反逆児

 自分にしか興味がない人間と、自分が生み出すものに全精力を傾けるがあまり、他に余力を持ち合わせていない人間。

 “ライ麦畑でつかまえて”で、多くの若者をとりこにした、J・D・サリンジャーは後者なのだろう。作家として名を成すも彼の生きがいは“書く”という一点のみに集中し、やがてその作品を世に出すことさえしなくなる。

 今なお世界中で読まれ続ける作品を最後に、隠とん生活を始めた作家の生涯は、その死後でないと公表されることも許されなかった。

 孤独な魂がさまようようなライムギ畑の主人公は多くの若者に寄り添ったが、“家族”と距離を置かずには生きられない男に添える女はそうは居ない。“距離”が愛するが故の手段だとしたら悲しすぎる。
◇シネマパレットで上映中