世界1位と2位の経済大国の制裁合戦が、世界経済に与える深刻な影響を懸念する。

 米国は10日、中国製品2千億ドル(約22兆円)分の追加関税率を10%から25%へ引き上げる制裁措置を発動した。約5700品目に及ぶ。

 さらにこれまで対象外だった約3千億ドル(約33兆円)分に追加関税を課す手続きに入ると発表した。実行されれば、中国からの全輸入品が追加関税の対象となる。

 自国第一主義のトランプ米大統領が、「どう喝」するように一方的に制裁強化策を打ち出す手法は超大国の指導者とはとても思えない。

 中国も13日、報復措置を発表。米国製品600億ドル(約6兆6千億円)分の追加関税率を6月1日から、最大10%から最大25%に引き上げる。

 トランプ氏が追加関税に踏み切ったのは知的財産権の侵害や技術移転の強要で折り合わなかったからとみられる。

 中国側の国有企業への不透明な政府補助金といった問題でも当初の姿勢から後退したことも要因だろう。

 一時は合意に向けて楽観視されていたが、中国は今月に入って一転したとされる。

 昨年の追加関税で中国経済は失速。習近平国家主席は早期に貿易協議に合意して追加関税を撤廃してもらいたいのが本音とみられる。

 中国は今年建国70周年を迎える。対米交渉で「弱腰」との批判が高まれば政権運営に響くという国内事情もある。

 米中の貿易摩擦のエスカレートは両国に何の利益ももたらさないことは明らかだ。

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 国際通貨基金(IMF)が今年4月に発表した世界経済見通しがある。

 米国と中国が追加関税を拡大し、互いの輸入品全てに25%を課した場合、両国間の貿易規模が「長期的に3~7割減少する可能性がある」と分析。企業が中国から生産拠点を移し、実質国内総生産(GDP)は中国が最大1・5%、米国が0・6%それぞれ減ると試算している。

 知的財産権侵害を理由に、トランプ政権は昨年から追加関税措置をとった。中国も報復措置で対抗した。

 10日に発動した関税引き上げの対象となるのは家電や家具など生活に密着した品目が多い。高関税は中国はもちろん、米国の消費者も直撃する。関税は米側の輸入業者が納めるため、輸入品価格の上昇のツケを払うのは結局、企業や消費者である。米国内からも懸念の声が出ているのはそのためだ。

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 IMFは日本などの企業にも悪影響が及ぶと警告している。中国での設備投資を控え、工場を他の国に移転する動きにつながるとの専門家の見方も出ている。

 全ての中国製品に関税を上乗せする手続きには産業界などから意見を聞く公聴会を入れると数カ月かかるという。

 そのさなかの6月には大阪で20カ国・地域(G20)首脳会合(大阪サミット)が開かれる。米中首脳が会談する「可能性が高い」という。

 世界経済に混乱を招くことは絶対に避け、米中の一致点を見いだすための役目を議長国の日本が果たしてほしい。