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「キャッシュレス決済の普及加速」を読み解く 岡﨑威生氏(琉球大学工学部教授)

2019年5月16日 05:50

 全国の銀行などでつくる「日本電子決済推進機構」は4月22日、スマートフォン決済の新サービス「Bank Pay(バンクペイ)」を10月に始めると発表した。メガバンクや地方銀行に加え、信用金庫や農協系も含め、将来的に千以上の事業者の参加を見込む。(4月23日付)

情報保護の姿勢注視を

 購買行動におけるキャッシュレス決済の普及が急速に広まっている。消費税率アップに向けての政府施策が契機となっているが、諸外国のキャッシュレス決済活用状況と比較すると出遅れ感は否めない。ここでは購買行動解析の視点から読み込んでみたい。

 現金の特性は匿名性である。紙幣や通貨は、その利用者が誰であるかを問わず物品購入の対価として有効であるため、購入者を記録することは原則できない。この場合、購入商品の組み合わせ、購入日時、購入地点、購入時の社会状況や自然環境に対して解析することとなり、典型的な手法としてバスケット分析が挙げられる。どういう時あるいは場所で、どういう組み合わせの商品がよく売れているといった情報の抽出である。購入者情報が欠落しているので、なぜ売れるのかの原因分析は推測の域を出ない。

 販売時点情報管理(POS)レジの一部は、販売者による性別や年齢層等の意図的記録を行っている。不正確ではあっても購入者プロフィルが加わることにより、販売ターゲットを明らかにできる。注意すべきは、匿名性は依然として保持されているため、集団に対する購買解析に限られる。

 購入ポイント等の動機づけによる会員カードの利用があった場合は、「個人ID」が購入商品にひも付けられる。登録された会員情報内容に依存して、個人IDが個人名と一致したり、単なる記号の場合もあるが、パーソナルレベルでの解析が可能となる。購買傾向の類似性の発見と、類似性に基づいた推薦システムが典型である。

 キャッシュレス決済は会員カードの場合と何が異なるのか。会員カードは解析対象となる購入商品を限定するため、個人の全ての購買行動を記録しているわけではない。電子マネーやクレジットカードは既に一般化しているキャッシュレス決済であるが、商品バリエーションは圧倒的に多い。ここに社会状況や自然環境を関連させることにより、記録は個人の行動を浮き彫りにしていると言える。このデータは、まさにデータサイエンスが想定している土俵であり、ディープラーニングや、探索的もしくは発見的に規則や特性を作り出すことにより、新しいビジネスモデル創出につながる。

 ところで、この記録は誰のものだろうか。当事者個人は自分の購買記録を閲覧する程度にすぎないが、決済機関は前述のフルデータを触ることが「できる」。重要な個人情報であることを踏まえると、しっかりとした権利保護の担保と、公正な姿勢が決済機関に求められるのは当然であり、消費者も注視することが必要である(琉球大学工学部教授)

★新企画「ニュースナビプラス」とは? 百貨店やコンビニなどを抱える小売業大手の会長、人工知能(AI)を研究する大学教授、スイーツ開発・販売業社長、旅行会社のシンクタンク社長、仕出し店とIT企業を経営する若手社長の5氏が、それぞれの専門的な知見を基に、国内外の気になるニュースを読み解きます。

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