かなわない愛ほど思いは募る。手の届かぬ人を思うとき、愛しい人を失ったとき、いつ帰るかわからない恋人を待つとき。注げない愛を持て余すほど、彼を深く愛しているような気持ちになる。

あなたはまだ帰ってこない

 でも、それは、そんな気がしただけなのかもしれない。「愛人/ラマン」でその名を世界に知らしめた女性作家マルグリット・デュラスの自伝的小説「苦悩」を原作にしたこの映画は「待つ女」の心理を見事に描写している。

 舞台は第2次世界大戦末期のパリ。街は戦争へ行った恋人や夫の帰りを待つ女性たちであふれている。彼女たちの心は複雑だ。待つ理由は「愛」。そう信じるしかない。不安やストレスに負けないため、とにかく「彼を愛している」と自己暗示をかける。そして、暗示がかからなくなった自分を想像し、恐ろしくなる。待つことは簡単じゃない。(桜坂劇場・下地久美子)

 ◇桜坂劇場で5月18日から上映