刑事裁判に一般市民の感覚を反映させる目的で導入された裁判員制度が21日で10年となる。

 殺人や強盗致死傷など最高刑が死刑または無期懲役か、故意に被害者を死亡させた事件が対象だ。裁判官3人と20歳以上の有権者から選ばれた裁判員6人で審理し、公判と非公開の評議を経て有罪・無罪と量刑を決める。

 10年間で審理数は約1万2千件に及び、裁判員や補充裁判員として参加した市民は約9万1千人に上る。

 専門用語を言い換えたり、写真や図を使いわかりやすくするなど刑事裁判の在り方が「劇的に変化した」ことが最大の成果といえる。

 裁判員裁判と裁判官だけの裁判と比較すると、量刑に顕著な違いがあるのがわかる。

 裁判員裁判では、性犯罪で判決がより重くなり、現住建造物等放火罪や殺人罪は執行猶予判決が増えている。

 性犯罪は人間の尊厳を侵害し、厳罰を求める市民感覚が表れた結果であろう。

 殺人罪などで執行猶予が増えているのは「介護殺人」など被告の事情を酌んだとみられる。

 課題もある。

 10年の節目を前に最高裁は総括報告書を公表した。裁判員候補者に選ばれたものの仕事などを理由に辞退した人の割合(辞退率)は増加傾向が続き、昨年は過去最高の67%に上った。全期間では6割を超える。

 選任手続きに出席する割合(出席率)も低下傾向にある。

 このままでは市民感覚を刑事裁判に生かすという制度の趣旨が揺らぎかねない。

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 那覇地裁は、選任手続きに臨む出席率が2018年までの3年間で5割以下だった。全国平均より17~20ポイントも低く、理解が進んでいない現状が浮き彫りになった。

 最高裁が今年実施した市民意識調査では7割が「被告の運命が決まるため、重い責任を感じる」と回答。8割が「参加したくない」としており、負担を感じて参加を避けていることがうかがえる。初公判から判決までの審理期間の長期化も要因とみられる。

 県内企業はほとんどが中小零細で離島県であることが出席率に影響を与えているのではないかとみる専門家もいる。地域にあった運用も検討しなければならないのではないだろうか。那覇地裁には出席率低下の理由を検証した上で、対策を立ててもらいたい。企業を含む社会全体で理解を深める必要もある。

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 最高裁による毎年のアンケートで「良い経験」と回答した人は全期間を通して95%超を示している。18年のアンケートでは参加前に積極的だった人は約40%にすぎなかったのに、参加後には約97%が良い経験と評価している。

 ただ経験者は裁判官とともに有罪・無罪と量刑を決める評議の経過や、具体的な意見の内容は口外できない。

 ほとんどの人が良い経験と評価している制度を社会で広く共有するためには守秘義務を緩和する方向で裁判員法改正を検討すべきだ。

 裁判員の心理的負担の軽減にもつながるだろう。