東京電力福島第1原発事故の対応拠点となった福島県のサッカー施設「Jヴィレッジ」が先月、約8年ぶりに営業を全面再開した。東京五輪で聖火リレーの出発地となることも決まり、復興を後押しする役割も担うという

▼Jヴィレッジを最初に訪れたのは事故から1カ月後だった。白い防護服を着た警察や自衛隊の姿、疲れ果て廊下で仮眠する作業員の姿、異様な雰囲気と放射能の恐怖を忘れることはできない

▼あの日から定期的にこの地を訪れる中で、読谷村出身の原発作業員に出会った。「沖縄では給料が安い。3人の子どものために働かないといけない」と胸に線量計を着け、汚染水タンクの組み立て作業に関わっていた。出稼ぎで、原発に携わる沖縄出身者が多いことに驚いた

▼Jヴィレッジは、福島県で原発10基を稼働させていた東電が、地域振興を目的に整備した施設だ。今も運営は東電が出資する会社が担う

▼原発事故は収束していない。気が遠くなる廃炉作業、被災者への補償、風評被害などの課題が山積する。避難指示が解除されても、帰郷する人は少ない

▼原子力を夢のエネルギーと信じさせてきた国や東電の責任は計り知れない。政府は「復興五輪」を誇らしげに掲げ、全面再開に期待を込めるが、この地で生きる人たちを置き去りにした復興はありえない。(吉川毅)