厨房でかぶる白いコック帽は、なぜあれほど長いのか。一説には、近代フランス料理の父と呼ばれたオーギュスト・エスコフィエ(1846~1935年)が、コンプレックスだった小柄な身長を補うために帽子を高くしたとされる。偉大な料理人の身のこなしが、世界中に広まっていった

▼そんな巨匠の後に続く日本の若きシェフ15人が、東京のフランス大使館に集まった。いずれも次世代を担うと嘱望された逸材。その中に伊良部島(宮古島市)のホテルで料理長を務める渡真利泰洋さん(34)がいた

▼古くから伝わる沖縄の食文化を自分なりにアレンジして届けたい-。沖縄とフランスの異なる食文化を調和させたいと話す姿が頼もしい

▼昭和天皇の料理番で知られる秋山徳蔵が弱冠20歳で渡仏したのは1909(明治42)年。本場でエスコフィエの薫陶を受ける

▼コース料理の芸術性、そして完璧性。秋山ら先駆者がその神髄を持ち帰り、戦後日本でフランス料理は一ジャンルとして開花していく

▼「料理は時代とともに変わっていくべきだ」。エスコフィエはこう言い遺した。渡仏して修業を積んだ渡真利さんは「沖縄をオマージュ(賛辞)した琉球ガストロノミー(美食学)をつくり上げたい」と夢を語った。若者の情熱が時代を動かす。いつか伊良部発の絶品を味わいたい。(西江昭吾)