沖縄県の米軍普天間飛行場周辺の湧き水から有害物質が検出されている問題を受け、京都大学の原田浩二准教授、小泉昭夫名誉教授はこのほど、湧き水を農業用水として使用する田芋畑のPFOS(ピーホス)など有機フッ素化合物の濃度を調べた。

田芋畑を背にする伊佐實雄さん(右)と妻のリツ子さん=24日、宜野湾市大山

 土壌からは高濃度のPFOSが検出された一方で、田芋は米国の生涯健康勧告値以下だった。原田准教授らは「食べても健康リスクは低く安全」との考えを示した。

 調査は今年4月、田芋の生産地である宜野湾市大山地区で農家1軒に協力を依頼した。土壌は、地表から5センチほどの深さから採取したものを乾燥させて分析したところ、5地点の平均値は1キロ当たりPFOSが最も高く1万1436・4ナノグラム。PFOA(ピーホア)332・1ナノグラム、PFHxS(ピーエフヘクスエス)315・9ナノグラムだった。

 田芋は5検体の皮を除去して分析した。PFOSの平均値は18・9ナノグラム。PFOA7・5ナノグラム、PFHxSは33・6ナノグラムといずれも米国の基準値を下回った。調査に協力した生産農家は、行政が継続して土壌などを調査するよう求めている。

 原田准教授らは「普天間飛行場で使用された泡消火剤の成分が地下水を経由して畑の土壌を汚染している」と推測。「田芋から検出されたPFOSなどは微量で、食品として安全だと考えられる」と説明した。

「栽培やめる」覚悟して協力

大山の田芋農家 伊佐さん夫妻

土壌提供「全部さらけ出す」

 【宜野湾】宜野湾市大山の伊佐實雄(さねお)さん(82)と妻のリツ子さん(77)が育てる田芋は、ゆで上げるとでんぷん質が白く光る。ふくふくとした食感にこだわり、水っぽい部分は決して出荷しない。

 京大の准教授らに田芋や茎、畑の土壌を提供したのは4月のこと。「2人で決めて、協力したんです。もし悪い結果が出たらその時は…田芋を売るのをやめようって」

 祖父の代から田芋を作り始めて3代目。3300平方メートル超の敷地で年間1トンを出荷する。よどんだ水に漬かるとたちまち根腐れすると言い、實雄さんは「湧き水が財産」と話す。

 その湧き水は米軍普天間飛行場に近く、2016年には県の調査で、有害なフッ素化合物PFOS(ピーホス)が検出された。報道の後、實雄さんは、エビやタウナギ、カニ、グッピーなどがいつも通り畑にいるか、カメラを片手に確認するようになった。

 今回、「食べる人の命に関わる」と覚悟して調査に試料を差し出した。田芋は「安全」との結果が出た一方、土壌は汚染されていると分かった。お得意さんたち15人ほどが「調べてくれてありがとう」と次々電話をくれたのが救いだった。

 かつて、本島あちこちの田んぼの隅で栽培されていた田芋。今も年中行事に欠かせない食材だが、生産地は限られている。リツ子さんは言う。「水と土がどうしてこうなったのか、誰に何を言ったらいいのかも分からない。調査で全部さらけ出すしか、私たち夫婦には怒りのはけ口がないんです」