今年1月20日、読谷村の国道58号で男性米軍関係者が運転する車が対向車線に進入し、計4台の車を巻き込む事故が発生。被害者の1人の女性(54)=北中城村=が、事故から4カ月以上がたった現在も破損した車の修理費や弁償がないと訴えている。いわゆる「Yナンバー車」による物損事故だ。米軍関係者は対物賠償の任意保険に未加入だったとみられる。女性は「米軍駐留ゆえの事故。なぜ個人に負担が降りかかるのか」と泣き寝入りの現状に憤る。(社会部・城間陽介)

事故を起こしたYナンバー車=1月20日、読谷村(読者提供)

米軍関係者との事故にあった被害女性は「なぜ個人に負担が降りかかるのか」と不満をもらす=16日、那覇市内

事故を起こしたYナンバー車=1月20日、読谷村(読者提供) 米軍関係者との事故にあった被害女性は「なぜ個人に負担が降りかかるのか」と不満をもらす=16日、那覇市内

■飛んできた車

 事故は1月20日午後7時すぎに発生。女性によるとYナンバー車は中央分離帯を越え「ひっくりかえった状態で飛んできた」。あわや正面衝突だった。女性にけがはなかったが、嘉手納署によると、巻き込まれた4台のうち1人が軽傷。署は運転手の男を自動車運転処罰法違反(過失傷害)の疑いで書類送検した。

 事故後、女性は米海兵隊当局から運転手の名前と連絡先を伝えられ、補償のやり取りを直接するよう促された。しかし電話はつながらなかった。そのことを米当局に告げると、「運転手は任意保険に入っていないようだ」「補償の窓口は沖縄防衛局になる」と説明されたという。

 女性は今度は防衛局に連絡。すると「海兵隊に補償するよう促す」(防衛局)との返答があったという。だが現在までに進捗(しんちょく)の報告はない。女性は「手続きに従ったのに何も進まない」と困惑する。

 車の修理代は自らの車両保険を適用したため保険料が上がった。車を修理している間1カ月はレンタカーを借りての通勤を余儀なくされた。

■補償は進まず

 米海兵隊は本紙の取材に「(任意保険加入義務の)規則に従わなかった個人は行政処分、懲戒処分の対象になる」とし女性への補償の見通しは示さなかった。

 沖縄防衛局は「個別具体的な状況について回答は差し控える」とし、当事者間で示談が困難な場合は日米地位協定の規定に従うと回答している。同協定では「日本側が被害請求報告書を米当局に交付すれば、米当局は金額を含めて支払いの可否を判断する」とするが、女性のケースが同協定に合致するかどうかは不明のままだ。

 女性は「私のように補償が進まず困っている人は他にもいると思う。日米当局が問題改善に本腰入れて取り組んでほしい」と求めた。

保険加入を義務付けているが…

 米軍は自家用車を持つ米軍人・軍属に対し自賠責と任意の二つの保険加入を義務付けている。違反した場合は免許停止または取り消し処分となる。

 しかし米軍関係者がよく利用する沖縄本島中部の自動車販売業者によると、車は米軍関係者個人で売買されることも多く「車両や保険の名義変更をしないまま乗り続ける人もいる」。

 客の9割以上が米軍関係者という別の販売店の男性スタッフは「未保険は多くの場合、事故を起こしたり、米基地ゲートでの抜き打ちチェック、車の新規購入時に発覚する」と話す。自動車を販売する際、購入者本人に代わって基地内の自動車登録事務所と日本の陸運事務所で手続きする男性スタッフは「車の保険や名義が変更されていないケースをたまに見かける」と明かす。

 交通事故の損害賠償請求に詳しいコザ法律事務所の日高洋一郎弁護士は「任意保険加入義務が果たされていない」と保険加入義務が形骸化している可能性を示唆。配属先の変更で沖縄を離れた本人と連絡がつかなくなるケースも少なくないとして、「保険加入チェックの厳密化を含め確実に補償する仕組みをつくるべきだ」と強調した。