心理学者で思い浮かぶのはフロイト、ユングだろうか。あまり知られていないが、アドラーを加えて三大巨匠といわれる。個人の幸せを追求したアドラー心理学が、組織の活性化に有効だと注目されている

▼コミュニケーションの充実を企業に提案する、プログレス(東京都)代表の渡邉幸生さん(42)もその一人。一緒に県内企業を訪ねる機会があったので、考え方を聞いた

▼「ダメ出しという言葉がありますが、大事にしたいのは『良い出し』です」。無理に褒め言葉を探すのではなく、部下が失敗したら「君のチャレンジがうれしかったよ」と声を掛ける。相手の行動でこちらが幸福を感じたと伝えることが、充足感の高まりや、挑戦を恐れない勇気づけにつながるという

▼上司は部下を注意しないといけないこともある。苦言と褒め言葉をセットで伝える手法は一般的だ。渡邉さんは「その際にbutは禁句」と言う

▼「君のここは素晴らしい。しかし…」と続けると、部下は〈説教が来る〉と察知。両耳をぱたんとふさいでしまう。「さらにこうすると、もっと良くなるね」という「and」の話法に心理的効果があるそうだ

▼ささいな言い回しの違いと言ってしまえばそれまで。ただ、言葉は時に組織の活力を左右する。心理学の巨匠を参考に、独自の幸福論を考えてみたい。(吉田央)