戦後50年の節目に製作された沖縄戦映画「GAMA 月桃の花」のモデルとなった県内最高齢の語り部、安里要江(としえ)さん(98)=沖縄県北中城村=が体調不良などを理由に語り部の活動を終えることを決めた。「一生やりたい」と約40年にわたり自身の戦争体験を伝え続けた安里さんは「私たちは平和のために伝える努力をしなければならない。みんな平和を願っている」と思いを述べた。

戦争語り部の活動を終えた安里要江さん=21日、北中城村喜舎場の自宅

 安里さんは当時の夫や子ら親族11人を沖縄戦で亡くした。年に1度は訪れる糸満市の平和の礎で、戦没者に「要江が語っていくから」とあいさつしてきたように「できるだけ後世に体験を残したい」と、語り部として全国各地で講話してきた。だが、体力の低下や体調不良に加え、3年ほど前から認知症となり、活動に区切りをつけることを検討してきた。

 当時8カ月だった娘の和子ちゃんを糸満市の轟の壕で亡くした体験を語らなくなるなど、認知症の進行で講話の内容にも変化が表れた。次女の比嘉佐智子さん(70)は「肝心な内容を話さなくなった。つらい記憶を忘れたがっているのかもしれない」とおもんぱかる。

 安里さんは米軍ヘリの飛行音を聞くと「攻撃に来た」と戦中に戻ったように話すことがある。「鉄砲の音がする」「あっちに兵隊が立っている」と口にすることも。ガマの暗闇がトラウマ(心的外傷)で、電気がついていないと寝られず、一人も嫌がるという。「母の頭には常に『戦争』がある」と比嘉さんは言う。

 16日に20年以上の付き合いがある大阪府の意岐部中学校の生徒へ講話し、活動の区切りとした。「みんな戦争があった過去を知らないといけない。経験した私たちは心の底から恐ろしさが出てくる。この思いを伝えてほしい」。安里さんは戦争の悲惨さ、恐ろしさを風化させないよう願った。