川崎市で児童ら20人が殺傷された事件で、自殺した容疑者が引きこもり傾向だったことが明らかになり、過剰な偏見を懸念する声が上がっている。容疑者を巡っては「死ぬなら一人で」との非難も目立つ。悲劇にどう向き合えばいいのか、沖縄県内で引きこもり支援に携わるアトリエみらい(名護市)の東邦治理事長(70)に聞いた。(学芸部・伊禮由紀子)

「本腰を入れて引きこもり支援の施策に取り組むべきだ」と訴える東邦治さん=31日、名護市・アトリエみらい

 -今回の事件をどう見ているか。

 「異常性のある事件で、亡くなられた方のご冥福を祈る。ただ『死ぬなら一人で』といったネット上の書き込みのように、加害者を責めるだけでは本質的な解決にならない。事件を繰り返さないためには、社会的な背景を考えるべきだ。引きこもりは犯罪者予備軍との誤解が広がることを懸念している」

 「引きこもりの大半は犯罪とは対局にあるおとなしい人たち。自己主張が苦手で社会的不安を抱えている人が多く、個人の責任であると短絡的に捉えてはいけない」

 -行政の対応について。

 「市が計14回も親族から相談を受けており、何らかの手は打てたはず。引きこもりについて実態の認識が甘かったのではないか」

 「長期間の引きこもりには節目がある。例えば、40代までに引きこもりを克服したくてもできず、50歳になって一気にモチベーションが下がる。今回の容疑者も51歳。『この世から消えたい』といった精神状態に陥りやすく、親族も異変に気付いて相談したのでは」

 -県内の状況はどうか。

 「沖縄は横のつながりが強く、子どもが引きこもると親も親族などの目を気にして引きこもる場合が多い。家族で抱え込み社会から孤立してしまうため、本人だけでなく家族支援が必要になる」

 -今後、どのような対応策が求められるか。

 「県が3年前に引きこもり専門支援センターを開設するなど、対策の一歩としては評価できるが、支援員の数が足りていない。性別や年代など一人一人に合った支援が必要だ。同じ境遇の人と集まり、自分自身を再確認できる居場所づくりも進める必要がある」