北部空港の実現を期待
りゅうぎん総合研究所のリポート「欧・米・豪・露からの外国人観光客の誘致について」と「ハワイの観光と沖縄」によると、大きな観光消費額を得るには、欧米や豪州などから長期滞在型の観光客を沖縄へ呼び込むことや、観光需要の巨大マーケットであるアジアに近い優位性を生かし、多くの観光客を受け入れる必要がある。
また、オーバーツーリズムへの対応が重要で、旅客輸送能力の拡大と陸上交通の負荷軽減、観光客の分散化を図る施策として、本島北部への格安航空会社(LCC)専用空港の建設を提言している。この提言が、四つの課題解決に有効な施策になると支持したい。
まず、那覇空港のキャパシティーの課題である。国交省によると、那覇空港で安定的に運用できる離着陸回数は年間13万5千回だが、2017年度の那覇空港の離着陸回数は約16万6千回と大きく上回っている。20年の第2滑走路供用開始後も、安定的に離着陸できる回数は18万5千回となり、現在の離着陸数の1.1倍にとどまる見込みだという。
その理由は、既存の滑走路を横断しなければターミナルに行けない誘導路の形状の問題や、空港運用時間の制限、国内・国際ターミナルの搭乗スポット数の不足、南西地域の安保環境から自衛隊機の運航が増加傾向にあることなどが考えられる。北部にLCC専用空港ができれば、国際直行便や格安国内便の拡充が可能となり、旅客輸送能力が拡大する。
二つめは、陸路の交通渋滞の課題である。観光客の移動手段はレンタカーが主体だ。慢性的な交通渋滞が発生し、県民生活にも影響を及ぼしている。北の玄関口として北部にもう一つ空港があれば、目的地に南北のいずれかの空港から入る流れができ、陸上交通の負荷軽減につながると考える。
三つめは、観光客の分散化と、沖縄本島の南北格差解消だ。空のアクセスが拡大し利便性が増すことで、北部地域が「来訪の目的地」となり、滞在時間や観光消費額の増加が期待できる。先月、北部11地域の観光協会のトップらは世界自然遺産のブランド化など、新たな観光ステージを見据え、県へ観光部局の北部事務所の誘致を求めた。離島を抱える北部12市町村は、北部振興会が空港建設や既存の空港活用促進、離島架橋や主要幹線道路ネットワークの必要性を決議し政府へ要請した。
最後に、万が一に備え、航空機事故や大災害などで空港が閉鎖した場合の相互のバックアップ機能としても、北部空港はその可能性を模索する必要があると考える。
この提言について、官民挙げて議論が進むことを期待したい。