まばゆい照明の中、紋付きはかま姿で26段の大階段をゆっくり下りる。満員の観客が見つめる惜別のとき。ハイビスカスの花で彩られたブーケを手に語り始めた。「愛にあふれた場所、タカラヅカ。私は今、幸せです」

▼宝塚歌劇団月組の娘役で活躍した浦添市出身の玲実くれあさんが15年の宝塚人生に終止符を打った。最終公演の千秋楽。「思いは伝わると信じて、誠実に舞台に向き合ってきた。芸事にひたむきに歩めたのは支えてくれた方々のおかげ」

▼歴代タカラジェンヌのあいさつも人柄がにじむ。天海祐希さんは「大好きな、私の誇る戦友たちが、どこへ行っても必ず勝利に導かれるよう、どこにいても祈りたい」。男役トップスターらしく勇ましい

▼「役目を果たし終えた充実感と、明日から当たり前だった世界から離れる寂しさで、複雑な心境です」。麻乃佳世さんは素直な胸の内を明かした

▼9日の公演後、雨の降る東京宝塚劇場前。大勢のファンが見送りで並んだ。玲実さんが姿を現すと「今までありがとう」と拍手が湧き、「でーじ、かなさんどー(とても愛してるよ)」の声援も飛んだ

▼玲実さんは深々と一礼し、さっそうと劇場を後にした。思い出の詰まったタカラヅカに別れを告げ、次なる道へ。「新たな人生も私らしく笑顔で」。夢の続きが紡がれていく。(西江昭吾)