名護市辺野古の新基地建設を巡り、総務省の第三者機関「国地方係争処理委員会(係争委)」(委員長・富越和厚元東京高裁長官)は17日の第2回会合で、県の審査申し出を却下した。県は埋め立て承認撤回を取り消した国土交通相の裁決は違法だとして取り消しの勧告を求めていた。

 富越氏は会合後の記者会見で埋め立て承認撤回を取り消した国交相の裁決は自治体の行政運営への介入を意味する「国の関与」に当たらず、「申し出は不適法」と却下の理由を説明した。

 今年2月には国交相による埋め立て承認撤回の執行停止に関し、係争委は同じく「国の関与」に当たらないと県の申し出を却下している。

 形式論に終始し実質審理に踏み込まなかった係争委の姿勢は納得できない。地方自治を守る砦(とりで)が形骸化し、存在意義が問われている。

 係争委は国と自治体の関係を「上下・主従」から「対等・協力」に転換した1999年の地方自治法改正に伴い設置。国と自治体の紛争の解決のために公正・中立の立場で調停するのが筋だが、その役割を担っているか疑問だ。

 2015年に同じ構図で県の申し出が却下された際、当時の係争委は防衛省沖縄防衛局が「私人」と同じ立場で承認を受けたとする国交相の判断に「疑問も生じるところ」と疑義を呈し「一見明白に不合理であるとまでいうことはできない」と結論づけた。

 だが富越氏は「一見明白説をとらず、疑問は生じない」と明言した。自ら審理対象を狭め、国寄りへの転換ではないか。15年が賛成多数だったのに対し今回は5委員の全会一致だった点にも表れている。

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 県の主張は極めて常識的なことである。

 行政不服審査法(行審法)は国民(私人)の権利救済を図るのが目的である。行審法を国の機関の沖縄防衛局が利用するのは不適法である。公有水面埋立法では民間事業者と国の機関を明確に区別。防衛局が行審法を使って「私人」になりすまして審査請求・執行停止を申し立てたことに多くの行政法学者から批判を浴びたことからもわかる。

 裁決を下した審査庁の国交相は防衛省と同様、内閣の一員で、辺野古新基地を推進する立場である。安倍内閣の下で異なる判断が出るわけがないのである。国の「自作自演」というほかない。

 係争委は結果的に国の手法を追認しており、これが許されるなら自治体の処分が何であっても国の機関が覆すことができてしまう。

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 係争委の却下は県が行った撤回や、国交相の裁決についても適法か違法かの判断をしているわけではない。最終的な判断ではないのである。

 県は係争委の結論を不服として福岡高裁那覇支部に訴訟を起こす方針だ。

 これとは別に、行政事件訴訟法に基づき、埋め立て承認の撤回を取り消した国交相の裁決を違法として取り消しを求める訴訟を那覇地裁に提起する見通しだ。

 司法には三権分立に則(のっと)り、政権に忖度(そんたく)することなく中立・公正な審理を求めたい。