親による子どもへの体罰を禁止し、児童相談所の体制強化などを盛り込んだ改正児童虐待防止法と改正児童福祉法が成立した。来年4月から施行される。

 昨年3月に東京都目黒区で当時5歳の女児、今年1月には千葉県野田市の小学4年生の女児が虐待死するなど、相次ぐ悲惨な事件を踏まえた法改正である。法案審議中の今月にも札幌市中央区の2歳女児の衰弱死も起きた。

 罰則はないが、「しつけ」と称して親が体罰を加えることを禁じることを明文化したのは、子どもの命を守るための前進といえる。

 今後、政府は何が体罰に当たるかを定義するガイドラインを作成する。分かりやすい内容と啓発活動の強化が必要だろう。

 親が子どもを必要な範囲で戒めることを認めている民法の「懲戒権」についても、施行後2年をめどに削除を含めた在り方を検討する。

 山下貴司法相は20日、法制審議会の臨時総会で見直しを諮問。「しつけ」名目の暴力は許されないとの視点で、削除を真剣に審議してほしい。

 改正法では、児童相談所で一時保護などの「介入」に対応する職員と、保護者の相談などに当たる「支援」の役割を分けた。担当職員を分けることで、保護にちゅうちょなく踏み切れるよう体制を強化するものである。そのため、弁護士による助言や指導を常時受けられる体制を整える。

 子どもの安全を何より最優先して確保するには、改正法をいかに実効性あるものにするかにかかっている。

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 これまでの虐待死事件では、関係機関の連携や情報共有の不足、転居などによる支援の切れ目などがたびたび課題に挙がった。

 千葉県野田市の事件では、女児が父親からの暴力を訴えた小学校のアンケートで、教育委員会が父親の威圧的な態度に屈して、コピーを渡したことが問題となった。

 改正法では、学校や教育委員会、児童福祉施設の職員に児童の秘密を守る義務を明記した。子どもに寄り添い、虐待から守るという基本的な支援をする上で重要な視点といえる。

 転居先の児童相談所や関係機関との速やかな情報共有の徹底も盛り込まれた。

 虐待した保護者に対しては、医学的・心理的な知見に基づく指導など、再発防止プログラムの実施を努力義務として明記した。再発防止のためには親を支援していくことも重要である。

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 虐待を防ぐ要となる児童相談所の体制強化には、人材確保と育成が欠かせない。虐待のケースは複雑多岐にわたることから、対応に当たる職員の専門性やスキルの向上も求められる。

 改正法にも明記されたように児童福祉司に過剰な負担がかからないような体制を整えることも急務だろう。

 救えなかった命に真摯(しんし)に向き合い、関係機関だけでなく、社会全体で虐待を根絶する意識改革も求められる。

 改正法を絵に描いた餅にしないためにも財政措置や施策を優先させるべきだ。

2019・6・21 沖縄タイムス