沖縄戦の戦火をくぐり抜け、激動の戦後を生きた戦争体験世代も、時がたつにつれ減少し、今や県人口の約1割となっている。体験を聞くという継承のあり方は難しさを増し、沖縄戦を伝えていくことへの危機感が高まる

▼沖縄戦の非体験世代28人が執筆した「沖縄戦を知る事典」(吉川弘文館)がこのほど発刊された。若い世代が多角的な47のテーマで史実を記録し伝える。継承へ向けた新たな展開だ

▼執筆者らは沖縄戦は広大な米軍基地が存在する現在と地続きと指摘する。編者の一人、吉川由紀さんは同書で「沖縄戦の教訓が今を生きる人々の財産となったとき、それは民主主義を否定する強大な暴力に抗(あらが)う原動力になるはず」と述べる

▼ひめゆり平和祈念資料館長の普天間朝佳さんも執筆者の一人。若い世代に戦争を「自分ごと」として考えてもらうことが重要と提起する。「要因さえそろえば今でも戦争への道を歩む可能性があり、戦争に自分自身が巻き込まれる可能性があることを想像することにつながる」と指摘する

▼沖縄戦を知ることは今を知ることに通じる。それはすべての世代の、今を生きるわれわれの責任でもあるはずだ

▼きょうは慰霊の日。鎮魂の祈りをささげるとともに、多くの犠牲の上に得た教訓を決して手放すことなく、継承への努力を忘れずにいたい。(内間健)