国立療養所「沖縄愛楽園」に入所するハンセン病元患者の平得壯市さん(82)がこのほど、俳句・短歌集「飛んで行きたや」を出版した。実名で出版したのは「生きた証しを残したい」との決意からだ

▼68年にも及ぶ園内での生活で、日々感じたことを大学ノートに書き留めてきた。著書には俳句363句、短歌490首を掲載。隔離された孤独や不安の中で、家族への言葉があふれている

▼〈娘より絶縁迫られ山笑う〉〈花嫁の父と呼ばるる晴れの日に出席できず祝電で済ませ〉。平得さんは「病が癒えても、なお理不尽な差別や偏見に苦しむ家族を思い、自分の心情をつづってきた」と取材で語った

▼1996年まで90年続いた国の隔離政策で、元患者だけでなく家族も深刻な差別を受けてきた。28日には、元患者の家族が国に損害賠償と謝罪を求めた訴訟の判決が熊本地裁で言い渡される。原告561人の約4割は沖縄在住者が占める

▼ハンセン病の歴史を伝える同園交流会館の辻央学芸員は「ハンセン病を患った人、そしてその命を排除する政策の影響が残る社会を今、私たちは生きている」と説明する

▼入所者は今でも、園の壁の向こう側を「社会」と呼ぶという。差別と偏見が残る社会は一人一人の無知と無理解がつくる。知らなければいけない事実に、向き合わなければ。(吉川毅)