千葉県野田市立小4年の栗原心愛(みあ)さん=当時(10)=が虐待死した事件で、父勇一郎被告=傷害致死罪などで起訴=の暴行を制止しなかったとして、傷害ほう助罪に問われた母なぎさ被告に千葉地裁(小池健治裁判長)は、懲役2年6月(求刑2年)、保護観察付き執行猶予5年の判決を言い渡した。

 求刑を上回る量刑は、母親でありながら虐待を通報せず、また逃げることもせず、逆に夫に手を貸した結果、わが子を死に至らしめた責任の重さを反映した。

 他方、保護観察付き執行猶予とした理由については、精神障がいを患っていることと、夫のドメスティックバイオレンス(DV)により自身も暴行を受けるなど、逆らうことは難しかったことなどを挙げた。

 判決は、虐待の加害者であり、同時にDV被害者でもある母親の置かれた困難な状況を投影した。執行猶予としては最長の5年に保護観察まで付けた背景には、実刑ではなく社会の中で再出発させる道を選んだ一方で、母親の社会復帰には長期間の支援が必要と判断したとみられる。

 判決を言い渡した後、小池裁判長は「(女児が)頼るべきはあなたしかいなかった。母親のあなたが同調した責任は重い」「心愛ちゃんのことを思いながら、反省の日々を送ってほしい」と説諭。その一言一言に、何度も「はい」と小さな声でうなずく母親の姿には、わが子の苦しみに対して無力だった自身への強い後悔が見えた。

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 子どもの訴えを見逃したのは母親だけではなかった。

 千葉県の祖父母は、夜中に立たされているのを見たのに通報しなかった。

 同県の柏児童相談所は、父親からの性的虐待疑いや虐待によるPTSD(心的外傷後ストレス障害)の診断が出た後に一時保護を解除。野田市は見守る必要があると判断したのに一度も自宅訪問せず、小学校は女児が1カ月近くも休んだのに状況を確認しなかった。

 女児が一時住んでいた沖縄県でも訴えは見逃された。糸満市は、親族から相談を受けたのに家族の転居先に女児が父親にどう喝されていたことを伝えていない。同市の小学校は女児への聞き取りもせず、記録もしなかった。県中央児童相談所は、父親や市から相次いで相談があったにもかかわらず積極的に関与しなかった。

 夜中に立たせる、どう喝する、母親へのDV、相次ぐ引っ越し、長期欠席-。どれも虐待のサインだが見逃された。

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 女児の死を検証する国のプロジェクトチームは、かかわった行政機関の29の課題を指摘した。その一つ、父親にどう喝されて女児のアンケートのコピーを渡した野田市教育委員会の失態は、その後に虐待がエスカレートし死に至らしめた結果を見れば、「ほう助」そのものである。

 家族の問題を家族だけに負わせていれば、虐待死はなくならない。家族の問題に介入する技術と知識、体制の整備が急がれる。