どちらかと言えば広く浅く知識や経験を蓄える。新聞記者は職業柄、ゼネラリストの側面が強い。だからなのか、一芸に秀でたスペシャリストから話を伺う時、ある種の羨望(せんぼう)と畏敬の念がよぎる

▼今年の沖縄タイムス賞に決まった舞踊家の志田房子さん(81)=琉球舞踊重踊流宗家=に東京の自宅でお会いした時もそうだった。それでも、初対面の緊張はいつの間にか消えていた。芸歴70年超の経験に裏打ちされた機知に富む話に一気に引き込まれた

▼「つくづく思う。人間には五臓があるけど、私にはもう一つ『舞踊』という臓器がある」。日常生活で、テレビを見ようが何をしようが、頭から踊りが離れない。「日々踊らないと栄養が行き渡らないのかもね」と笑う

▼そうそうたる受賞歴を持つ自身の歩みを大好きなスポーツに例えた。「マラソンで、今にも倒れそうな選手が途中、給水で補給してゴールを目指す。私もそう。今までの賞は全て給水のようなもの。頂くたびに、また頑張ろうと力が湧く」

▼3歳で歩み始めた琉舞の道。戦前に師匠から手ほどきを受け、戦争を生き抜き、戦後は教えを絶やすまいと努めてきた

▼誕生日の7月2日に一つ齢を重ねて82歳。「きょうが人生で一番若いと思っているの。28歳になったつもりで、まだまだ走り続けたい」。若き探求心に感服。(西江昭吾)