社説

社説[米朝首脳会談]非核化へ実ある交渉に

2019年7月2日 05:30

 米朝首脳会談は電撃的に実現した。

 トランプ米大統領は6月30日、南北軍事境界線がある板門店で、北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長と3度目の会談をした。

 会談に先立ち、両首脳は軍事境界線を挟んで握手。現職の米大統領としては初めて北朝鮮側に足を踏み入れた。敵対関係解消に向けた歴史的な一歩である。しかし、北朝鮮の非核化実現に向けた一歩になるかは不透明だ。

 会談で両首脳は非核化交渉を再開することで合意した。トランプ氏は、今後2~3週間以内に米朝実務協議を開くとの見通しを示した。

 米朝交渉が停滞していただけに再開を歓迎したい。

 電撃会談の背景には何があったのだろうか。

 トランプ氏には来年の大統領選を念頭に、外交成果をアピールしたい狙いがあろう。

 金氏には、制裁緩和を引き出す手掛かりとしたい思惑がありそうだ。

 非核化を巡っては両国の隔たりは大きい。

 米国が完全な非核化を制裁緩和の前提としているのに対し、北朝鮮は段階的に進めることを求めている。

 トランプ氏は会談後、対北朝鮮制裁を「維持する」と述べる一方、今後の交渉の進展次第で制裁を見直す可能性があると表明した。

 今回の会談が非核化協議の進展に向かう契機になるのか、単なる政治的パフォーマンスに終わるのか。

 実務協議を軌道に乗せ、非核化へ向けた具体的なプロセスにつなげてもらいたい。

    ■    ■

 トランプ氏が6月29日、20カ国・地域首脳会議(G20サミット)のために大阪に滞在していた際にツイッターで呼び掛けた。金氏が応じたため会談は電撃的となった。

 昨年6月、シンガポールでの初会談で朝鮮半島の完全非核化で合意。今年2月、ハノイでの再会談では北朝鮮は寧辺の核施設廃棄と引き換えに広範な制裁解除を提案した。米側は完全非核化を求めて応じず、物別れに終わった。

 実務協議の積み上げが十分でなかったからである。準備不足のまま行うトップ同士の会談に危うさが潜む。

 金氏には完全な非核化をする意思はないとの見方があり、楽観はできない。

 ストックホルム国際平和研究所は、北朝鮮の核弾頭製造能力は今年1月時点で20~30個との推計を発表している。1年間で10個ほど増えている勘定である。

    ■    ■

 非核化は、東アジアの平和と安定に不可欠であり、日本も連携を強めるべきだ。

 安倍晋三首相は5月に前提条件を付けずに日朝首脳会談を求める方針を打ち出したが、北朝鮮側が「過去の植民地支配の清算が必要」などと批判し、実現していない。

 北朝鮮問題を巡る6カ国協議を構成する国の中で金氏と首脳会談を実現していないのは日本だけである。

 安倍首相は「私自身が金正恩委員長と直接向き合わなければならない」と言っている。北朝鮮との関係改善が欠かせない。このためには日本独自の外交交渉も必要だ。

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