米国のレーガン元大統領は、ジョークの達人で知られた。テレビ番組のスピーチで「私は大統領になるための資質をすべて備えている」と自賛した。「第一に抜群の記憶力。第二に…何だっけ」と聴衆を笑わせた逸話がある

▼こちらもジョークのつもりだったのか。安倍晋三首相がG20サミット夕食会で、大阪城を復元する際にエレベーターを付けたのを「大きなミス」と発言した。まったく笑えない

▼主要国の首脳に「わが国は、足が不自由な人は城の天守閣に上らせない方針だ」と伝えたようなもの。外交上も社交上も、不適切だ。日本はバリアフリーの必要性を軽視した国、とのメッセージを国際社会に発信しかねない

▼G20の議長を務めるのは外交的な見せ場だ。首相は「外交の安倍」をアピールする重大な決意で臨んだだろう。顛末(てんまつ)がこれでは、情けない

▼首相は5月、無条件で日朝首脳会談に望む方針に転じ、トランプ米大統領に伝えた。G20後、電撃的に無条件会談したのは、トランプ氏と北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長。同行したのは、G20で首相が袖にした韓国の文在寅大統領だった

▼レーガン氏は暴漢に銃撃され手術を受けた際、医師団に「君たちが全員、共和党員であることを祈るよ」と緊張をほぐした。ジョークのセンスは、外交センスにも通じる気がする。(吉田央)